第98話 成長
舞踏会が終わって、カルロは騎士団に入るため特訓を受けていた。
モリスさんから聞いたことがある。
優秀でありながらも金銭的な問題で学園に入れないという子たちには特待生として入学できる制度があるらしい。
ただ、この制度を受けるための条件が非常に厳しく、ちょっとやそっとでは合格できないという。中には厳しい鍛錬に耐え切れなくなって逃げしてしまう者もいるそうだ。
しかし、カルロはそれに耐えて力をつけた。
そしてとうとう学園入学の許可をもらえたのだ。
さすがに騎士団の関係者が認めるだけあって、カルロの力は凄かった。
というか、俺が生産魔法にかかりきりでなかなか剣術の鍛錬に熱を入れられなかったというのはあるが……それは言い訳だな。
仮に鍛錬へ熱を入れていたとしても、カルロに勝てたかは分からない。
それくらい、彼は強くなっていたのだ。
「ほぉ、さすがは養成所で好成績を修めただけはある」
「マドリガル騎士団長も一目置いているらしいぞ」
「なるほどね。ウィドマーク家の御子息には少し酷な相手だったか」
聞こえないと思っているのか、或いはわざと聞こえるように話しているのか……それ自体の真意は不明だが、目の前にいるカルロが強いという事実だけは変わらない。
「はあっ!」
「ぐっ!?」
さらに攻撃を仕掛けてくるカルロ。
俺はなんとかさばくのがやっとで反撃なんてする暇がない。魔銃を使えれば、まだ状況を覆すことができたかもしれないが、そもそもこれは剣を用いた模擬戦なので使用するわけにはいかない。
なんとか機を狙っていたのだが、
「そこまで!」
審判役を務める教員の声で、俺たちの手は止まった。
「時間だ。今日はここまで」
「えっ? も、もう?」
まだ開始から一分も経っていないと思っていたが、時間経過を計るために置かれていた砂時計は空となっており、間違いなく試合終了を告げていた。
「ありがとうございました、アズベル様」
「い、いや、俺なんて何もできずに防戦一方だったよ」
カルロから握手を求められ、俺はそれに応じる。
「本当に強くなったよ、カルロ」
「この学園で学び、さらなる高みを目指したいというのが目標でしたからね。それが叶えられるレベルに達せて本当によかったです」
「そうだな。今度は心強い味方としてともに励んでいこう」
「はい!」
力強く互いに手を握って、模擬試合は終了。
結果は俺の負けに近いに引き分けで終わったけど、得られるものも多く充実した時間を過ごすことができたな。
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