第96話 カルロとの再会

 原作である【ブレイブ・クエスト】では俺とロミーナの前に立ちはだかり、最終的には奈落の底へ落す張本人――主人公カルロ。


 だが、この世界での俺たちの関係は原作と大きく異なる。

 きっかけは舞踏会の日。


 カルロが事前に異変を察知して兵たちに呼びかけるが無視されてしまう。原作ではこれが原因で王都は壊滅的ダメージを受け、ロミーナの闇落ちに一歩近づいてしまうのだが、それを知る俺は彼と協力して大惨事を未然に防ぐことができた。


 その後、カルロはマドリガル騎士団長のもとで鍛錬に明け暮れているらしい。


 彼のひたむきな態度が評価されたらしく、マドリガル騎士団長が身元保証人となって学園への入学が許可されたという。


「あの方には本当になんとお礼を言っていいのやら……あっ、もちろん、おふたりにも深く感謝していますよ!」


 明るい笑顔を見せるカルロ。

 原作とは違った流れになっているが、彼が不幸な目に遭わなくてよかった。

 ついでに俺たちの未来も守れたし、万々歳だな。


「またご一緒できて光栄です」

「俺たちも嬉しいよ。なっ、ロミーナ」

「えぇ。よろしくね、カルロ」

「こちらこそです!」


 貴族である俺たちと平民であるカルロ。

 

 立場は違うが、俺たちは紛れもなく友人同士だ。


 カルロからしてみても、周りに知らない人ばかりだったので心細かったと言っていたし、これからも良好な関係を築いていけそうだ。


 今回はあくまでも見学であり、入学はもうしばらくあとになるわけだが……楽しみが増えたのでさらに待ち遠しくなったよ。


 三人で話ながら移動していると、あっという間に演習場へと到着。

 そこでは上級生たちが剣術の鍛錬中。

 木製の模造剣を使用し、実戦を意識した対戦形式――つまり模擬試合を行っていた。


「はあっ!」

「うわっ!?」


 金髪の生徒が茶髪の生徒の持っていた剣を弾き飛ばして勝負あり。

 ……まあ、生徒同士の鍛錬だから仕方がないのだけれど、なんというか迫力不足は否めないな。


 モリスさんやパウリーネさんとやっている鍛錬はこんなものじゃない。

 すると、上級生を指導していた教師が俺たちの方へと視線を送る。


「未来の新入生の中で挑戦してみようという子はいないかい?」


 この無茶ぶりに困惑する俺たち。 

 ――だが、


「はい!」


 勢いよく手をあげたのはカルロだった。


「おっ、威勢がいいな。じゃあ、対戦相手は――君、どうかな」

「お、俺ですか!?」


 まさかの指名を受ける俺。

 ……でも、カルロと模擬試合か。


 面白そうかもな。

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