第75話 ヤバい相手
ついにパルザン地方周辺に潜伏していると思われる魔法使いの魔力を探知した。
すぐにでもヤツを捕らえに向かいたいところではあるが……今回はまず敵情視察ということで大人組が特定した場所へと足を運び、子どもである俺とロミーナは屋敷で待機することになった。
「今はみんなを信じて待ちましょう、アズベル」
「そうだね……」
もちろん、俺もみんなを信じている。モリスさんもパウリーネさんもミリーさんもイルデさんも――全員が相当な実力者だ。そもそも今回はただの偵察なので、四人とも無茶な行動は控える……はず。
それでも、妙な胸騒ぎがした。
何事もなければよいがと心配していたら、
「ただいま戻りました」
モリスさんの声が聞こえた。
俺とロミーナは顔を見合わせるとパッと笑い合い、大急ぎで部屋を飛びだす。屋敷の玄関では偵察に出ていた四人を父上や使用人たちが出迎えていた。
「どうだった?」
真っ先に父上がモリスさんにそう尋ねる。
すると、
「敵はこちらの想像以上に厄介な人物です。騎士団も魔法兵団も協力して挑まなければならないでしょう」
神妙な面持ちでそう告げた。
相手の魔法使いはワイバーンをひとりで討伐してしまうくらいの実力を持ったモリスさんでさえ、慎重にいかなければならないと危惧するほどの実力者なのか……まあ、舞踏会の夜に大型モンスターたちをけしかけて王都を襲撃させようとしていたくらいだからな。とりあえずまともじゃないのは確かだ。
「それについてだが、先ほど魔法兵団が使い魔をこちらへ送ってきた。今から騎士団と協議をして、部隊を編制すると」
「ならば、返事はこちらから送りますわ。――想定の二倍の兵力は必要になると添えなくてはいけませんもの」
ミリーさんの言葉に、俺は戦慄する。
そんな凄い相手がこのパルザン地方に……いや、そもそもなぜそこまで執着してくるのだろうか。
俺たちが相手の作戦を台無しにしたからという理由では、ここまでこだわる理由として弱い気がする。何か、別の狙いがあるんじゃないか?
「アズベル様とロミーナ様は屋敷でお待ちください」
「あとは我々でなんとかします」
「は、はい、お願いします」
頼もしいモリスさんとパウリーネさんの言葉――だが、俺の中にある妙な引っかかりは未だに消えないままだった。
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