第76話 不安要素
ついに発覚した敵の魔法使いの居場所――だが、相手は想定以上の強敵らしく、モリスさんもパウリーネさんも、あのイルデさんでさえ慎重にことを運ぶべきだと提案。
これについてはようやく国も動きだし、部隊を編制中だという。
報告を受けた父上はイルデさんの鳥型使い魔を通してパルザン地方全域に警戒態勢をとるよう指示をだした。
領主が領民たちへそういった指示を送ること自体は決して珍しいわけじゃないのだが、数百年単位でこの地に暮らしている魔女のイルデさん曰く、パルザン地方でこのような事態になるのは記憶にないらしい。
つまりこれはパルザンの長い歴史の中でも例を見ない、史上初の出来事ってわけか。
「みんな大丈夫かな……」
屋敷で待機するように言われている俺とロミーナは、毎日不安を抱いていた。
安全を考慮して中庭すら出られなくなっているということで、肉体的にも精神的にも疲労が溜まっているのが原因でもあるのだろうけど、いい状態とはよべない生活環境であった。
「ロミーナ……信じよう。きっと騎士団や魔法兵団が解決してくれるさ」
「う、うん」
なんとか元気づけようとするも、やはり彼女の心は不安でいっぱいのようだった。こんな時に力になれないなんて……己の無力さが嘆かわしいよ。
とはいえ、子どもの俺が出ていったところで戦力にはならない。
相手はあのイルデさんさえ警戒するほどの実力者だ。
俺が対抗できる手段なんて――
「あっ!」
そうだ――魔銃だ!
エンペラー・スパイダーを倒した時のように……いや、違う。それよりもさらに強化した新生魔銃でいざという時に備えよう。
俺が騎士団や魔法兵団の作戦に参加することを誰も認めてはくれないだろうから、せめて自分の身を守れるくらいの力を持っておきたい。万が一、その魔法使いがこの屋敷を襲ってきたりでもしたら大変だからな。
夕食後。
体長が優れないというロミーナはメイドさんたちと一緒に自室へと戻っていった。
父上の話では、二日後に騎士団と魔法兵団の混成部隊がこちらへ到着するらしい。
どうやら、舞踏会の件で王家は未だに怒り心頭のようで、黒幕を捕まえるのに躍起となっていると教えてもらった。そりゃあ、あとちょっとタイミングが悪かったら間違いなくこの国は滅んでいたからな。ロミーナにとっても大きな闇堕ちフラグだったわけだし。
ともかく、今回の件でオルメド王家が本気になっていると分かった。
ひと安心をしつつ、俺は自室に戻って魔銃の強化に挑む。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます