第65話 ひとり作戦会議

 謎の存在に狙われるハメになった俺とロミーナ。

 このままではパルザン地方から一歩も外へ出られなくなってしまう。

 ……まあ、領地運営を重視したい俺としてはそれでも構わないんじゃないかって思えるのだが、この前のように船を狙われるなど、周りの人たちが巻き込まれる可能性もあるため、あまり悠長に構えている場合でもなかった。


「暗殺者がこちらへ差し向けられるかもしれませんな……」


 俺はモリスさんとまったく同じ不安を抱いていた。船に細工をしようとしていたヤツは捕まえたけど、ヤツのように魔法を使えないのがこっそり入り込んでくるケースも想定できる。そうなると結界魔法でも防ぎきれなくなってくるな。


「これはもう屋敷から出ることすらままなりませんね」

「そ、そんな……」


 パウリーネさんの言葉にすっかり怯えてしまったロミーナ。

 まずいな。

 せっかく最近はいい感じに調子が戻りつつあるのに、ここでまた不安定にさせてしまうような事態を招いてしまうなんて。


 ここはやはり……俺の生産魔法でなんとかするしかない。


  ◇◇◇


 その日の夜。

 夕食を終えて自室へと戻った俺は、この窮地を打開するための新たな魔道具づくりをするためアイディアを絞りだしていた。


「とは言うものの……今回もまた厄介な案件だな」


 何が厄介って、今までのように「これを作ればいい」という明確な目標がないからだ。


 湖を移動させるための船とか、モリスさんの義手とか、何を作るのかがハッキリしていればそれに合わせた素材とか作り方とかいろいろと考えていくんだけど、そもそも何を作ったらいいのか分からないというこれまでに状況がややこしさに拍車をかけていた。


「黒幕を捕まえるアイテム……そんな物があれば苦労はしないんだけどね」


 とりあえず、そんな都合のいい存在は一旦忘れるとして……もう少し内容をかみ砕いていこうと思う。

 たとえば、捕まえるのではなく相手の居場所を把握するというのはどうだろう。イルデさんと話では結界魔法と並行して探知魔法も発動させて魔法使いの現在地をあぶりだそうとしているらしいが、現状上手くいっていないらしい。


 さすがのイルデさんも、大量の魔力を消費するふたつの魔法を同時に使用するのは困難のようで、どうしてもどちらかがおろそかになってしまい、敵はその隙をついてきているのではないかと予測していた。


 だとしたら――


「俺がそのどちらかを補えれば……」


 イルデさんと協力して敵の居場所を探しだす。

 あとは応援を要請して一気に畳みかければいい。


 よし……少し道が明るくなってきたな。

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