第61話 モリスの願い
かつての腕を取り戻しつつあっ たモリスさんからのお願い。
それは――
「私をあなたの近衛騎士にしていただきたいのです」
「へっ?」
まったく予想もしていなかった言葉を耳にして、思わず気の抜けた声が口から洩れでてしまった。そりゃあ、俺個人としてはモリスさんみたいな凄腕の騎士が守ってくれるとなったら嬉しいけど……凄腕だからこそ、こんな辺境領地に身を置いておくのはもったいないと感じてしまうのだ。
「とても嬉しいのですけど、モリスさんにはもっと活躍できる場があると思います」
「それは……」
「では、こうしてみたらどうでしょうか」
モリスさんをフォローするように声をあげたのはパウリーネさんだった。
「先ほど彼自身が口にしましたが、まだ本調子とは言えない状態です。なので、今後の鍛錬を行いつつ、製作者であるアズベル様にも時折義手のコンディションをチェックしてもらうというのは」
「な、なるほど! つまりしばらくここでリハビリをしていくということね!」
パウリーネさんがフォローに回ったのを見て、今度はロミーナもそれに合わせてわざとらしく頷きながら言う。
けど、リハビリというのはまさにその通りだなと思った。
腕が戻ったからと言って、以前のように使いこなすにはまだまだ時間がかかる。その間にトラブルが発生するかもしれないし、そうなった時はすぐに俺が直せばいい。こうした事情を考慮すれば、かえってこのパルザン地方にいる方が彼のためになるか。
「そういうことなら……モリスさんには俺の近くにいてもらった方がいいですね」
「あ、ありがとうございます」
俺が許可を出したことで、モリスさんはお礼とばかりに深々と頭を下げる。むしろそれはこちらがやらなければいけないのだが……本当に真面目な人だな。
ただ、こればかりは俺の一存で決めきれない。
本来の当主は父上だ。
最終的に父上が了承しなければ実現には至らない。
……とはいえ、ひとりでワイバーンを倒せるくらいの実力を持ったモリスさんが近衛騎士としてこの地に残ってくれるわけだし、何より俺が望んでいると知ったらきっと了承してくれるはずだ。
「では、改めまして」
本人からの許可が下りると、モリスさんはその場に跪いた。
「騎士として、この身をかけてあなたをお守りいたします」
「頼りにしています、モリスさん」
こうして、俺にも近衛騎士がつくことになった。
それも、ワイバーンをひとりで討伐できるほどの腕前をもった凄い騎士が。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます