第62話 リフレッシュ
凄腕の騎士であるモリスさんが俺の近衛騎士となる。
この衝撃的な展開は、さすがの父上も予想できていなかったらしく、モリスさんの本人から申し出があった際に「ほ、本当か!?」とかなり動揺していた。
俺は「ワイバーンを討伐した」という最近の活躍しか知らないのだが、その前に何度も素晴らしい戦果を挙げ、次期騎士団長の筆頭候補になっているという。
そんなとんでもない人が専属の騎士として俺を護衛してくれる……それ自体は光栄なことなんだけど、一応リハビリが終わるまでという期限付きではあった。
まあ、それだけ凄い人が辺境領地であるパルザン地方の近衛騎士で終わるというのはもったいない話だし、トータルで見たら国にとって損失でしかないだろう。俺としても、それは不本意だからな。
モリスさんが正式に俺の近衛騎士となった次の日。
ついに屋敷外での活動が解禁となった。
とはいえ、素材集めで割とあちこち行っていたから、そこまでの新鮮さはないのだが……精神的な疲労が見えていたロミーナにとっては良い気分転換になったみたいだ。
「アズベル! 水がとっても冷たくて気持ちいいよ!」
「今行くよ~」
近くの森を流れる川で水浴びをする俺たち。
すぐ近くではパウリーネさんとモリスさんが周囲に目を光らせ、その他のお世話はペンバートン家のメイドさんたちがテキパキとこなしてくれる。俺とロミーナはまさに至れり尽くせりの状態であった。
しかし、周囲のそうした頑張りもあって、ロミーナは確実に立ち直っていった。
これなら、中断していたイルデさんとの魔法特訓にも期待が持てそうだ。
あと心配なのは……やっぱり、ここ最近起きている不穏な動きの原因解明だろうな。
舞踏会の夜――俺とロミーナがカルロの言葉を信じていなかったら、今頃このオルメド王国は壊滅的なダメージを負い、さらに他国からの信用も地に落ちていただろう。そうなれば没落の一途をたどるのみ……でも、それをなんとか踏みとどまれた。
しかし、それは裏を返すとこの国を転覆させようとした連中の怒りを買うことになってしまった。
実際、俺の作った船を沈めようとした者が出現し、狙われていることがハッキリとなったわけだが……黒幕を捕らえなければ、この不安から解消されることはないだろう。
ロミーナと一緒に水浴びを満喫しながら、俺はずっと考えていた。
どうやったら黒幕を捕まえられるだろうか、と。
もし――ヤツらが俺たちを狙ってこのパルザン地方に潜り込んでいるとするなら、向こうから近づいてくる確率もかなり高い。
……そこを狙うしかなさそうかな。
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