第29話 もうひとりの貢献者
舞踏会を襲撃しようとしていたモンスターたちは、ロミーナの氷魔法によりすべて撃破できた。
これにはさすがに誰もが驚き、それと同時に自らの魔力切れを覚悟してまで立ち向かったロミーナの勇気をたたえる。
その頑張りによって舞踏会は大きな混乱もなく終了し、オルメドとフォルザンの両国は交友を深めることができ、今後も良好な関係を築いていけるだろうと父上が教えてくれた。
さらに、今回の出来事は国王陛下の耳にも入り、ロミーナだけでなく俺にも勲章を授与してくれるという。
……ただ、まだ素直には喜べていない。
あれ以降行方をくらました主人公カルロのことがずっと気がかりだった。
今回の事件は誰よりも早く異変を察知し、城へ忍び込んでまでも俺たちに知らせようとしてくれた彼の功績だ。俺たちはその情報に従ってモンスターを食い止めたに過ぎない。彼がいなければ、今頃オルメド王都は壊滅的なダメージを負い、ロミーナの破滅フラグも成立していただろう。
そうなると、カルロは俺たちにとってとんでもない恩人だ。
なんとかして、彼にも勲章を送ってもらいたい。
これを実現させるため、俺はすぐに動きだすのだった。
◇◇◇
城へと戻ってくると、国王陛下の厚意で部屋を用意してもらえた。
魔力を使い果たして寝息を立てているロミーナをイルデさんとパウリーネさんに任せ、俺は騎士団長へ直談判しに行くと決意する。
「どちらへ行かれるのですか?」
部屋を出ようとしたら、パウリーネさんに声をかけられた。
そこで、ここまでの流れを改めて説明すると、
「でしたら、私も一緒に行きましょう」
「い、いいんですか?」
「そのカルロという少年にも勲章を与えたいというあなたの気持ち……ハンパなものではないのでしょう?」
「もちろん!」
「でしたら、お手伝いいたします」
そういえば、パウリーネさんはもともと騎士団にいたんだった。となれば、騎士団長とも面識はあるだろうし、話が通りやすくなるかもしれない。ダメもとでお願いをしようと思ったけど、彼女がついてきてくれたら成功率がちょっとは上昇するかな。
俺はパウリーネさんと一緒に廊下へと出て、事後処理中と思われる騎士団長のもとを訪れることに。忙しいのは百も承知だが、こういうのは早いうちに伝えておくべきだろうと判断して行動を起こしたのだ。
「ところで、騎士団長ってどんな人なんですか?」
何気なくパウリーネさんに尋ねると、彼女の体が一瞬ピシッと強張った。
「? パウリーネさん?」
「す、すいません。ちょっと意識が飛んでいました」
「えっ?」
そんなことある?
というか、そのリアクションで大体察したぞ。
「もしかして……めちゃくちゃ怖い人だったりします?」
「しょんなことはありません。マドリガル騎士団長は……多少厳しいところはありますが、話せば分かってくださる方です」
いきなり噛んでるし、目も泳いでいる。
あのパウリーネさんがここまで緊張するなんて初めて見たな。
マドリガル騎士団長……一体どんな人なんだろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます