第4話 人妻を抱きたい!!

髭に赤い帽子の人が玉座に座ってこっちをじろじろと見てくる。怖い。


やめろ。やめるんだ。こっちに来てキスしそうな距離でガンをつけるな。怖いから、法務部が怖いから。


一応説明しておこう。ここはヨキン帝国の敵国、この木にキノコ国、略してコノキ国だ。そしてここはその玉座の間。

何故か僕は一人、コノキ王とクソ執政とその他もろもろに尋問されていた。


「僕はヨキンの王子だぞ!」

「元、ですじゃ」

「うむ」


ダメだ。これはどうにもならないや。

諦めて寝よう。この転生人生も波瀾万丈であんまりいいことなかったな。

でもそれでいいんだ。うん。僕はもう、疲れた。


「シンジ殿、聞いておるのか!」

「うげえ、なんか王様に怒られた」

「王じゃない、首相じゃよ」

「どっちもあんま変わんないって」


ゴルとサファイアはどこ行ったんだよ。助けてくれよ。このままじゃ拷問されてまた牢屋の展開だよ。

いや、待てよ、こういうピンチだからこそまだ秘めてあるチート能力が開花するのでは?


例えばあのクソ大臣に目からビームでぶっ殺せるとか。

言い遅れたがクソ大臣とは実はヨキン帝国で執事長になってスパイしていたこの国の大臣だ。僕はこのクソ大臣に騙されて無理やりここに連れてこられたんだ。ふざけやがって。


「ごほん。わしが王子を、ごほん、元王子、いやシンジを何故ここに連れてきたと思う?」

「え? どうせ僕を外交の道具にするためだろ!」

「いいかよく聞くのじゃ、あの能力開花の儀式は失敗していた可能性が高い」

「ドウイウコトダ!」

「実は儀式の前日、教会には能力開花を望む人々が押し寄せておって、そのせいで儀式の帽子が疲れ切っていたと思われるのじゃ」


それらしい理由を言われても、あんまり信じられないよ。なんか王様も首を傾げてるし、あと本当にそうだとして、なんで僕をここに連れてきたんだよ。そもそも父にそのことを言ってくれれば――――、


「帽子のことがあっても、シンジを処刑させるようにしたのは他でもないヨキン帝王ですぞ」

「なんで考えてることがわかっ――――」

「いいから、儀式を改めてしますぞ。兵よ、儀式の帽子を持ってきてくだされ」

「……ないです」

「なに?」

「教会にありませんでした」


辺りが騒めきだした。なんかちょくちょくと兵士の中から「だったら処刑しかなくね?」とか「そもそもアイツは処刑だろ」とか凄い聞こえる。

なんなら王様も早く終わらせてくれって面倒くさがってるし、これヤバいな。


「別にこの元王子いらんしなぁ。なくてもいい気がするんだよなぁ……」

「首相、そこを何とか、数日だけ!」

「でもな、めんどくさいしなぁ。強かったら国家転覆とか乗っ取りとかありえるし……」


頑張れ! 大臣! クソ野郎とか言って悪かったから!

もう信用してるから! 頑張って! てか本当に! 死んじゃう!


「うむ……やっぱ処刑!」

「王様!?」


なんかスキップしてやってきた兵士らが掴みかかってきた。やめろ、死にたくない。引きずるな。死にたくない。

大臣、助けてくれ、ちょっとなんで諦めたような「まぁしょうがいないか」って顔してるの?

いやいや、待ってよ――――ん? え?


なんか天井を突き破って、玉座の間になんか落ちてきたんだが。てか王様がぶっ倒れてる。

兵士たちは慌てて部屋から出て行ったし、大臣もなんかカーテンの裏に隠れてる。


「ってあれ……儀式用の帽子じゃね?」


逃げていこうとしていた兵士が気づいた。それで他の兵士も戻ってきた。なお、王様は気絶したままだ。だれか介抱しろって、帽子ばっか見てないで。

あと大臣、まだビビってるの? いいかげんカーテンから出て来いよ。


「それにしてもなんで帽子が空から降ってくるんだ?」

「確かに魔術師の仕業か?」


そういえば……あのクソ帽子って僕が吹っ飛ばしたっけ。

ま、まぁ、ジャストでここに飛んできてくれてよかった~。


ということでようやっと儀式が始まりました。

相変わらず重い帽子を被され、待つこと数十分。


「うん……ほとんど無能力」

「は?」


ここまで時間かけといてほとんど無能だなんて、そんなのってありなのかよ!

呆れた顔をした大臣と王様に命乞いをしながら、僕はまたもや牢獄ではなく、なんかただ玉座の間を追い出された。


まぁ確かに僕が死のうが死ぬまいが、そこまで関係はないのかな?

いやいや、もしも父に僕がここにいることがバレれば、まずいのではないのか。まぁ細かいことはいいか。サファイアちゃん探しに行こっと。


とりあえず城の中を散策。こっちは自由だな。堂々とメイドらが王様の文句を言ってるし、一般市民も結構見かけるし。


「あら、あなたが捕まったっていう元王子さん? 残念だったわね、戦力になれなくて」


なんかすっごい胸の大きくて、セクシーな服を着た色っぽい美女が。胸が見え、見え、見えそうで見えない。


「あら、そんなに見たい? だったら……私の部屋に来ない?」

「行きます!」


興奮してきた。私の部屋? 行くに決まってんだろ。

こうやって自由の身にされたのならやることは一つだ。欲望に従うぜ。

なんか兵士が後をつけているみたいだけど気にしない。従順に生きるぞ。


僕は美女に広く豪華な部屋へ誘い込まれた。香水の匂いに欲望が掻き立てられる。

それにしても宝石がめっちゃあるし、窓から見える町の夜景は綺麗だし、ん? なんだこの写真は――――あれ、この美女、王様の奥さんだ。人妻だ。


「あら、バレちゃった? でも関係ないと思わない?」

「いや、でもまずいですって」

「なにがまずいの? もともとあなたはただの一般市民。夫に構うことはないわ」

「それもそうか!」


僕は某怪盗にならって服を脱ぎながら人妻ベッドへダイブした。もうなんでもいいや、人妻ってのもなんかいいし、寝取り最高!


「ごほん、なにをやっておられるのですじゃ?」

「……あれれ?」


触ろうとした寸前でじじいの声が、てかベッドの横に立ってた。これはまずいな。

逃げないと、でも人妻、いや、逃げないと。

いや違うだろ。もう引き返せない、引き返したくない、触りたい!!


「シンジ、奥様を襲うのはダメですぞ」

「ええい! そんな知るか!」


失うものがなにもないのなら僕は人妻と不倫してやる。性の喜びを満喫してやるぞ。

てかこんな誘ってくる人妻に逆らえるわけないだろ!


「これから王になる者がそれでは困ります」

「え?」


今なんて? 幻聴じゃないよな?

いや、幻聴に違いない。もうどうでもいいから人妻に欲望ぶつけてやる!


「帽子野郎に話を聞いたところ、シンジ様の能力は今は弱いだけで、ちゃんとあるようです」

「え?」


あぶな、あとちょっとでおっぱい触るところだった。いやでもちょっとくらいなら、ちょっ、大臣ジジイが手掴んで触れない。


「いいですか。シンジ殿は――――――――民衆の支持が多いほどステータスが高くなるという能力だったのじゃ」


なるほど、どういうこと? 票数って何?

もうなんだかわからないし、やっぱり人妻と――――って放せよ、ジジイ!


「ヨキンは帝国。選挙を致しません、だから無能力と言われたのですじゃ。そして今、シンジ殿はただの一般市民ですじゃ!」

「だったら人妻抱いてもいいだろ!!」

「そしたら首相になるどころか、支持を獲得できませぬぞ!!!」


どうしても人妻を抱きたい僕と何故か僕を首相にしたいクソジジイ。

半ば殴り合いにまで発展しそうな言い争いは外から鳴り響いてきた足音に止まった。やべえ、王様来た? 隠れないと。


「執政殿、敵が攻めてきました!」

「なに!? ヨキンか?」

「ち、違います! えっと……ネズミ国です」

「な、なぜじゃ!?」


ホントかよと僕も外を覗いたが、見覚えのある耳と赤いパンツの群れがあって、ちょっと心が痛んできた。


<あとがき>

てへぺろ。

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転生したら王族の子孫にされて強すぎて大変です 大神律 @ritu7869

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