第6話 お誘い

 それから数日間は警戒を強めて過ごした。


具体的には、威圧を少し派生させて微量の威圧を一定の空間に張り巡らせることにより、気配を察知する……なんてできるわけもなく、変なやついないかな程度に思っていただけだったけど。


いや俺もやろうとしたよ。威圧には可能性が秘められているんじゃないかって思って研究したよ。知っていたか? ありんこに威圧を向けたら逃げていくんだぜ? 思った以上にありんこは賢いらしいな。


まあそんな感じで思い当たる限り威圧を向けてみたけど、生物は基本効くらしい。本能的な何かなんかね? そりゃ効き幅はあったけど。


ちなみに植物に向けてやってみたけど惨めになってやめた。何が楽しくて緑の葉っぱと睨めっこしないといけないのか。


 このまま何も起こることなく、面倒なイベントは全てフローラの周りで起きてくれとか思っていたけど、そうは問屋が卸さなかった。



 「ジン君? 」


そう声をかけたのはクラスの女子だった。話した記憶はないけど、急にどうしたのだろう。


「なんだ? 」


「えっと、太陽神教って知ってる? 」


「聞いたことくらいなら」


そう答えながら少し警戒を強める。頼むから爆弾は抱えてくるなよ?


「あ、そうなんだ。よかった。お願いがあるんだけどいいかな? 」


え、嫌な感じしかしないんだが……でも問答無用に断るのも可哀想だし。話くらいは聞いてやるか。そう思ったのが運の尽きだった。


「どうしたんだ? 」


「えっと、明日太陽神教の宣教師さんのお話が聞ける会があるんだけど、1人じゃ不安で……一緒に来てほしいな、なんて……だめかな? 」


そう上目遣いで頼んでくる。でもリターに警戒しておけと言われているし、フローラに協力しろと言われているしここは断腸の思いで断らないといけないか。行くにしても、ちゃんとフローラに話を通してからじゃないと。


そう冷静な判断を下した俺は断ろうと前を見た。


意識していなかったけど前屈みで頼んでいるせいか、胸が強調されてしまっているわけで……この子結構胸あるな? そう思った俺の判断は早かった。


「俺でよかったら。」


「ほんと⁉︎ ありがとう! じゃあまた明日ね! 」


そう嬉しそうに言ってどこかへ行ってしまった。まあ、潜入調査ということで俺に非はない。むしろ褒めてほしいくらいだな。俺は完全に開き直った。


まぁフローラに言うのはやめておこう。面倒臭いことになりそうだからな。うんうん。事後報告で満足してもらおう。


俺の冷静な判断は一瞬にしてどこかへ行ってしまったのだった。

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