第12話 猿? いや、アオミドロです。

 「君たち何をしているんだい? 」


おーい君たち、何をしているか聞かれているぞ? 


「そこの男子2人だ。」


どうも俺たちだったみたいだ。


「何をしていた? 状況次第では実力で教師に突き出す事も辞さないが。安心しろ。私はつい今し方通りかかっただけだ。話くらいは聞いてやる。」


何も安心できねえよ。返答次第では担任の元へ強制送還させられるわけだろ? そしてあらぬ疑いを着せられて……たまったもんじゃない。


何か言いかけていたサクヤを目線で制す。ここで俺たちが何か言っても多分無駄だ。相手は俺たちが悪いと思い込んでいるからな。失言してするか、揚げ足を取られて強制送還されるのが落ちだ。


ならば、一縷の望みをかけて剣聖の娘、フローラに目線を送る。すでに威圧は解除しているため、いつもの凛とした態度だ。側から見てとても冷静に見える。


フローラとて問題が広げられるのも、俺の威圧が効いてしまうことが教師にバレるのも嫌だろうから、当たり障りのないことを言って交わしてくれるに違いない。


そんな俺の目線を理解したのか、小さく頷いて説明し始めた。


流石、剣聖の娘だ。頼りになる。


「先輩、心配してくださってありがとうございます。ですが、問題ありません。実はこの人たちは私に告白してくださったのですが、余りにも熱心でどう断れば良いか戸惑っていただけなのです。ですので、ご心配なさらず。」


そう言って頭を下げるフローラ。


流石、聖剣の娘だ(手のひらドリル)。おつむの方は難しいみたい。仕方ないね。強いんだから。専門外だよね。そうだよねそうだよね。


……そんなこと猿でも信じないだろ! 何が2人同時に告白じゃい。


「なんだそうだったのか。君たち、青春を謳歌することはいいが、あまり女の子を困らせるなよ? では私はこれで。」


猿以下でした。脳みそアオミドロかな? え、もしかして都会では2人同時告白が主流だったりするのか? もしそうだったらそんな文化潰れればいいと思う。


優雅に去っていく微生物を見送った俺たちは暫くその場で呆然と立ち尽くしていたのだった。

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