第11話 体育館裏で
そして放課後、人気の全くない体育館裏。
「あなた、私のこと好きなの? 」
開口一番、意味のわからないことを言ってきた。
「……? 」
沈黙を肯定と受け取ったのか、
「やっぱりそうだったのね。でもごめんなさい。私は貴方とは付き合えないわ。」
と言ってきた。なんか勝手に振られてしまった。と言うかそう言う判断になる根拠がわからん。日々ちょっかいかけているから、あり得るなら嫌いの感情だろ。まぁ、俺にはそんな感情一切ないんだけど。
「いや、そうじゃないんだが……と言うか、何を根拠にそうなるんだ? 」
「あら。男子は得てして好きな女の子にちょっかいをかけるものだと聞いていたのだけど? 」
何それ。この子の恋愛観、10歳前後で止まってね?
このまま振られた人としてこの場から逃げ出してもよかったのだが、それはなんか負けたような気がして癪だった。
「そういう人もいるかもしれないけど、少なくとも俺はそうじゃないな。」
「じゃあ何故そんなことをしていたの? 」
そんなもんお前さんの反応が面白かったから、からかうのをやめれなくなった、なんて言えないな。
「面白かったから。」
あっ。
「なっ! 貴方、私の反応を楽しんでいたっていうの? 」
流石剣聖の娘、頭の回転が早いようで。え、これ不味くね?
「違う違う、反応が可愛かったから。」
「かっ、かわっ! 」
もう俺は喋らない方がいいかもしれない。家に帰ったら口元を黒い布で覆ってその上にばつ印でも書いておこう。
見ると、フローラは怒りで震え出している。
怒りで紅潮した頬とは対照的にどんどん冷えていく模擬刀。真剣でなくても、氷で覆われたその剣で斬られれば普通に死ねる。刃はついていないとはいえ、なんてもん持ち歩いてんだよ。
これはまずい。だが俺にはサクヤという名の護衛がいる。躊躇わず、護衛を召喚。サクヤに合図を送る。
その瞬間、俺とフローラの間にサクヤが警戒体制で割り込んできた。はっや。風すごいし、おい、土煙がやべえ。
ただこれで、相手は剣聖の娘だとしても数的には有利だ。ならばこれで存分に威圧が放てる。もし失敗してもサクヤがいるから安心だ。
威圧。
そこそこ強めに威圧した。
するとフローラは急に怯え始め、それはもう天敵の前の小動物か何かのようだった。もう先ほどまでのオーラはない。
勝ったな。自然と笑みを浮かべる。それを見てか、フローラは涙目になりかけている。
……これはまずい。何がまずいかと言えば今の状況だ。
男子2人が寄ってたかって女子1人を泣かせているとしか見えない。それに1人は模擬刀を携え、1人は後ろで口角を上げている。
客観的に見てアウトだ。もしこんなところを誰かにでも見られたりしたらまずい。俺は慌ててサクヤに合図を送る。撤退の合図だ。
昨夜もそれに素早く気づき、その場を離れようとして固まる。俺も続いて振り返り、固まった。
いた。
こーれ、まっずいです。しかもなんか正義感強そうなイケメンで勘違いされたらめんどいタイプのオーラを放ちまくっている奴が俺たちの退路に仁王立ちしていたのだ。
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