第13話 取引

 この空気に居た堪れなくなった俺はこの場から逃げようとした。が、フローラはそれを許してはくれなかった。


「待ちなさい。」


はい、待ちます。言われた通り、素直に立ち止まり、振り返る。怖えって。


「取引よ。」


取引? 一体何を取引するのだろうか?


「あなたが私にしたことは忘れてあげるわ。その代わり、私があなたのそれが苦手なことは黙っていてくれないかしら? 」


サクヤがいるからか、威圧という言葉を使わないが、要するに怖いからやめてってことね。了解、了解。流石にやりすぎたとは思ってたからここら辺で引いておくのが無難か。これ以上はマジで殺される。


「分かった。」


大人しく了解する。


「良かったわ。私はこれで。」


そう言って、どこかへ行ってしまった。


残されたサクヤから、


「フローラさんに何したの? 」


と聞かれたが、


「まぁ、色々あってな。」


「そうなんだ、強い人って大変だね。」


「おん。」


なんか上手い感じに誤魔化すことができた。ところでなんだろう、この胸の痛みは。


(第1章終)

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