第9話 挨拶

 食堂でご飯を食べ終え、一旦部屋に戻り荷物を持ってクラスへ向かう。今日から授業が始まるので、流石にクラスには緊張感があるのかと思っていたが、全然そんなことはなかった。


早速友達を作って喋っている人が多数だった。例の如く銀髪の少女は1人で分厚い本と睨めっこしていたが。


貴族も多いみたいだからそういうのに慣れているんだろうか。


適当な席について、先生が来るまでサクヤと話していた時だった。


そこへ三人の男子のグループが話しかけてきた。


「なぁ、お前。名前はなんて言うんだ? 」


ちょっと強面のリーダーっぽい人が明らか俺に向かって話しかけてくる。え、俺なんかしたっけ?


「ジン、だけど。」


「ジンか。俺はマシュー、まあ偽名だがよろしく。」


そう言って手を差し出される。これ、握った瞬間投げ飛ばされるとかないだろうな。少し警戒しつつ、手を握る。同い年とは思えないほど、ごつごつとした大きな手だった。


しかし予想は外れ、何も起きなかった。


「お前よくあの殺気の中、立っていられたな。すげえよ。」


それどころか賞賛だった。呆気に取られていると、


「ああ悪い。集団で押しかけて怖がらせちまったな。」


まずい、ばれていたのか。なんて思ったが、それはサクヤに向けたものだった。サクヤはビビりすぎ。


「まぁ、同じクラスメイドだ。何かあったら声かけてくれよな。これからよろしく。」


そう言って去っていった。


「こちらこそ。」


その背中に向けて言った。


それを皮切りに色々な人が話しかけてきた。昨日は話しかけづらかったが、さっきのマシューのおかげでタイミングができたみたいだ。


どうやら、思ったより入学式のことが目立っているらしい。


これについてサクヤに少し文句を言ったら、強い人の定めだねだとよ。嫌われるよりかはよっぽどいいが、少し疲れた。それに騙しているような気がしてきて、少し気が引けた。


まぁ、暫くこれに関しては上手いことするしかないなぁ。本当に昨日の夜の決心がどこへいったのやら。ほんと、深夜テンションって恐ろしいそう思ったのだった。

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