第6話 訓練場

 図書館の見学はほどほどに、続いて本命の訓練場へとやってきた。それは屋外にあり、なかなかの広さだった。中には模擬戦や、素振りをしている先輩も多くいた。


その時、端のほうで1人剣の素振りをしている銀髪の少女が目に入った。入学初日だというのに熱心なことで。少しは見習わないといけないな。


ここでもまた親切な先輩から場所の使い方や、規則など簡単に説明してもらった。詳しくは入り口近くの掲示板に張り出されているらしい。あとで詳しく見ておかないと。一番お世話になるであろうところだからな。


「剣術科は魔術科と違って、レポートみたいなものがない代わりに、成績がつくのは実技が多いからね。もちろん座学は必要だけど。だから毎日の鍛錬は欠かせないんだよ。ほら、実力って一朝一夕には身につかないでしょ。レポートは一夜漬けしようと思ったら出来るけど。まあ、だんだん見知った顔が減っていくのはちょっと悲しいけどね。」


うん。だから重いんだよな。先輩からすれば軽めのジョークかもしれないけど。ほら、他の新入生もなんともいない顔をしているじゃん。


なんて、とある生徒からの質問に答える先輩の言葉に突っ込んでみたりする。もちろん心の中で。


俺らが話を聞いている間にも、剣聖の娘は剣を振っていた。とても綺麗な型で、日々の鍛錬の凄さが窺える。物凄く努力をしてきたんだろうな。


周りの人も邪魔したら悪いと思ってか、少し離れたところで素振りしたりしていた。


でもダメだった。何がダメかというとああいう子を見るとどうも悪戯したくなってくる。ただ、今ちょっかいを掛けると殺されかねないため、先輩の話を聞くふりをしながら機会を伺った。


すると数分後に彼女は剣を振るのをやめ、木陰に移動していった。手にはタオルと水筒を持っていたので休憩に入るのだろう。絶好の機会だ。ああいう人って休憩が少ないイメージがあったから、てっきり今日は無理かななんて思っていたのに。ただここからは見えない。


さりげなくその場をさり、自然に彼女が見える位置に移動する。案の定、彼女は木陰に座り休憩していた。


そうなればすることは一択。先生の殺気にも耐えていたことも考慮して、出力ちょっと強めで威圧を向ける。


すると彼女はビクッと体を震わせてから、足を抱えて縮こまり、左右にキョロキョロと顔を振った。先生の殺気に耐えたとは思えないほどの良い反応に、つい笑みを浮かべてしまう。


そんなに良い反応されちゃ、もっとやりたくなってしまうのが人のさが。


でも今日のところは冷徹そうな剣聖の娘の、可愛らしいところが見れたことにひとまず満足しておく。そろそろ戻らないとサクヤに怒られそうだしな。


何事もなかったかのように剣を振り出す彼女を見届けてから、元いた場所に戻った。



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