第5話 図書室

 朝。ウキウキして寝れないとか言っていた割に直ぐに寝たサクヤと共に登校する。寝坊したらめっちゃ怖い先生が扉を蹴破って起こしに来るというのを噂で聞いてから、2人して大量に目覚ましをかけたのだ。


実際は、一つ目で起きたから要らなかったけど。


教室に着くと何人かはもうすでに座っており、各々喋ったり本を読んでいたりと好きなことをしていた。中には剣聖の娘もすでに着席していたが、1人で本を読んでいた。姿勢良すぎだろ。


席は自由らしいのでやや後ろら辺に2人で座った。机は長机で、2人で1つのタイプだ。


そして担任がやってきた。その頃にはほとんど人は席についていた。何人かはまだ立っていたけど。


「よし、席につけー」


そう言いながら前に立つ。若めの男の人で、程よく筋肉がついていた。


「俺は今日からお前らの担任を務めるアドルフだ。よろしく。」


そう言って辺りを見渡すアドルフ先生。この学院では基本的にラストネームは名乗らない。それは身分に対する配慮だ。それに必要ならば、仮名を使ってもいい規則もある。その場合は学院側に申請が必要だけど。



 連絡事項やらこの学院のルールやらをひとしきり説明し終わって、今日はお開きとなった。


どうやら今日から図書室や訓練場、その他いろいろな施設が利用できるらしい。今日だと先輩たちもいるから見学するのににちょうどいいみたいだ。


それに明日から授業が始まるから今のうちに行くのがいいとも言っていた。


ならばとサクヤと共に回ることにした。


まず初めに訪れたのが図書室だ。


分厚い本が所狭しと並べられており、とても近寄りがたい雰囲気を放っていた。


先輩の説明も受け、ひとしきり眺めた。やっぱり剣術と魔術に関する本の数が半端ない。もちろん物語や伝記その他諸々もあるのだが、端の方に追いやられていた。


中でも存在感を放っていたのが魔導書だ。剣術かな俺にはあんまり関係ないけど、たまにみてみるのも面白いかもしれない。


中には五冊くらい積み上げて何か紙に書いている人もいる。


その様子を眺めていると、


「明日はレポートの提出日だからね。ああやって毎回ギリギリで詰め込む人がいるんだよ。」


と先輩が教えてくれた。剣術科は実技メインだが、魔導科はそうはいかないらしい。十分な座学の上に初めて魔法が使えるようになるみたいだ。


もちろん剣術科だからと言って座学を怠っていると痛い目を見るからね。と注意もしてくれた。軽い感じで言われたが、同級生が何人も退学している先輩の話はなかなかに重かった。

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