5、スケート教室

 五年生の三学期のスタートは、校外でのスケート教室だった。


 僅かなレクチャーの後、仲の良いもの同士がくっついてはしゃいで滑り始めると、私は疎外感を感じた。


 その中で、回遊する波に乗れていない子を発見する。

 それは、教科書がない時にいつも見せてくれていた隣の席の久美ちゃんこと、くーちゃんだ。


 くーちゃんは、私よりもずっと小柄で猫っ毛の髪をほわほわと束ねている女の子だ。

 声をかけても無視されることはないだろう。

 私は意を決して、くーちゃんに声をかけた。


「くーちゃん、一緒にすべろう!」


「蘭ちゃん、すべれるの?」


 私は運動は何でもできる。

 スケートも1、2回滑ったことがあるし、よく川沿いのサイクリングロードでローラーブレードをしていたから似たようなものだ。


 よろよろとしているくーちゃんの手を取り、転ばないように支え滑り方を教える。

 私が少しコツを教えると、くーちゃんはすぐに滑れるようになり楽しく過ごせた。


 帰路に着く中で私はくーちゃんのことを色々知った。


 バスケ部であること、生き物係であること。

 私はあの汚れた金魚の水槽のことが気になったが、それよりもバスケ部があることを知り胸が高鳴った。

 前の小学校でも、バスケ部に入っていたからだ。


「私、前の学校でバスケ部だったんだ。見に行ってもいいかな?」


 そうして、私は放課後のバスケ部に見学に行く約束を取り付けた。

 


 前の学校では、もう少しバスケを続けたら6年生の子のような、ハイカットのバッシュを買ってもらう約束を母としていた。


 転校でうやむやになってしまったが、まだ有効だろうか?


 目の前が少し明るくなった気がした。

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