4、冬休み
転校から1か月足らずで冬休みに入った。
私は学校に行かなくてすんで正直ホッとした。
休み中は前の学校の友達に手紙を書いたり、妹の凛ちゃんと遊んだりしてすごした。
遊んでばかりいる私に母がさすがに漢字テストの勉強しなさいと言った。
「終わった漢字を勉強しても、新しいテストの点数にならないからイヤ……」
私の返事を聞き、母が過去問と教科書を見比べて出題範囲を発見してくれた。
単純に、教科書の巻末の漢字一覧から出題しているだけだった。
担任も友達もこんな簡単なことを誰も教えてくれなかったことに、私はひどく裏切られた気がした。
(何も知らない転校生が先生に殴られた姿を見て、あの子らは何とも思わなかったの!?)
見て見ぬふりをするのは共犯だとわかるくらいには、小五は大人のはずだ。
(私ならそんな子がいたら、絶対に教えて助けてあげたのに、どうして??)
私は変身できなくてもいつだって心は『美少女戦士』だと思っていた。
誰にでも元気に挨拶をし、いじめられている子を助け、人知れず乱れたみんなの靴をそろえ、ゴミを拾う。
そういう正しいことをできる自分が好きだったし、誇らしかった。
ここには、同じ志の美少女戦士はいないのかも知れない。
*
正月が終わり、五年生の最終学期が始まった。
冬休みの間に僅かばかりだがすり減った心を修復し、元気を充電した私は新しい学期に期待していた。
しっかり休めたし、前の学校の友達からも手紙が来た。
まだ忘れられていないことがうれしかった。
(三学期はせめて一人でもいいから友達を作って、前の学校の友達に『友達ができたよ!』と報告したい!)
しかし、このクラスの中に美少女戦士を目指す私の本当の仲間になってくれるような子がいるのだろうか?
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます