第4話 おもしれ—女
誠意を込めて【冒険者】兄妹に、同行させてもらえるように頼み込んだ。
———が、
「ね、ねぇお兄。やめたほうがいいよ。この女やばいって。将来楽して生きていたいなんていうヤツにロクな奴はいないから、とっととここから逃げた方がいいって……」
「そんな……!」
妹の方……!
そんなみなまで言わなくてもいいだろうにと思ったが、私が顔を上げるとびくりと体を震わせて顔を逸らす。
私が何のリアクションもしないとでも思っていたのだろうか。妹の方は慌てふためいて無意味に髪をいじりだすような挙動不審な動きをしている。もしかしたら自分の発言で他人がどういう反応をするのか、まだあまりわかっていないのかもしれない。
「お、お願いします……! いきなりこんな場所で頼まれて不審に思うと思うんですけど……最近【冒険者】試験に落ちた私にとって、目の前に都合よく表れたあなたは運命の人なんです! 白馬に乗った王子様みたいな人なんです! お願いです……私を冒険に連れて行ってください……!」
再度、頭を下げて兄の方に誠意が伝わったかどうかチラリと顔を上げて様子を伺う。
金髪で
そう思っていたところ……兄の方がフッと笑った。
「おもしれー女」
「あ、兄?」
「え⁉ っていうことは……!」
同行させてくれるということだろうか……⁉
期待に胸がわき、両手を胸の前で合わせる。
彼からの次の言葉を待つ。
「おもしれー女」
「……兄?」
「あ、はい。気に入っていただけてありがとうございます? あのそれで連れて行ってもらえるんでしょうか?」
「おもしれー女」
「…………?」
兄の方の様子がおかしい。
少し笑った状態から表情が動かず、どこか目線も私に向けられておらず……私と彼の間の虚空に焦点が当てられている。
「あの~、大丈夫ですか? 話聞いてます?」
彼の顔へ向けて手を伸ばす。
すると、彼はビクンと全身を震わせて後方へ飛ぶように下がった。
金属製の椅子に座った状態で飛んだので、床とこすり合わせてキィー! とものすごく不愉快な音が響いた。
「……え? お兄さんどうしたんです?」
「……お兄は病気なんです。女性アンドロイドに触れられると死んでしまうという病気で」
「え⁉ そんな大変な病気があるんですか⁉ な、なんて名前の病気で⁉」
「童貞———って名前の病気で……」
「……それはお気の毒に」
可愛そうな人なんだな、この人は。
「フッ、おもしれー女」
相変わらず微笑を浮かべて強がっているけど。
う~ん……なんか頼りなさそうな人たちだけど、この人たちが【冒険者】であることは事実だし、これからダンジョン攻略に向かうと言うのなら、これ以上都合のいい話はない。
「あの~、それでも連れて行ってほしいんですけど。ダメですか?」
妹の方へ問いかける。
「え……あの、えっとその……」
彼女は目を泳がせて必死に私と目を合わせないようにしている。
「私どうしても、秋葉ダンジョンに潜りたいんですけど……」
「えっと、その、えっとそのぉ……!」
目をグルグル回してパニック状態に陥っている。
妹の方は私に対して好意は抱いていない。それどころか怖がっている。だけど、兄の方よりはましだろう。兄の方は相変らずどこを見ているのかわからない目をして「おもしれ—女」と呟き続けているのだから。
「あの、お願いします! 妹さん……!」
ガッと彼女の両手を掴み上げると、妹の方は更にパニックに陥る。
「あの~……その……えっとぉ……! スゥーーー………ッ」
もう一押しだ。
「お願いします! 妹さ……あ、そう言えばお名前聞いてませんでしたね? なんて言うんですか?」
「あ、あのぉ……‼」
「————マイロード兄妹だな⁉」
ガチャリと銃の撃鉄が上がる音が聞こえる。
「———え?」
ふと、気が付くと私の前にいる二人の兄妹アンドロイドに何人も空色の制服を着たアンドロイドたちが銃を向けている。
「警察……?」
過去の人間の治安維持部署と同じ名称の組織が、私の目の前の【冒険者】二人に向けて———こう言った。
「【
………………………………………………………………………………………え?
童貞アンドロイドはセッ〇スしたい。 ~人類がいなくなった世界でのダンジョン探索~ あおき りゅうま @hardness10
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