第3話 都合のいい出会い
カランカラン……。
この私のいるメイドカフェ『ゴシュダイ・ネオ秋葉原シティ店』に新しいお客さんが来たようだ。
「お帰りなさいませ、ご主人様。お二人様ですか?」
「あ、ハイ」
「すいません、今満席なんですよぉ。相席でもいいですか?」
「あ、ハイ」
「ではこちらの席にどうぞ……お嬢様、この席にお二人様大丈夫ですか?」
「あ、はい」
今の「あ、はい」は私だ。私の口から出た言葉だ。
———え?
「あの、ちょっと……!」
ボーっとしていた。
ボーっとして反射的に「はい」と応えてしまった。
顔を端末から上げた時にはもう遅い。
「相席テーブルお二人様でーす!」
「「おかえりなさいませ~‼」」
私の対面に二人のアンドロイドがドカッと腰を下ろし、案内したメイドさんは忙しそうに速足で去っていく。
「あ……」
「あ……」
怖そうな丸サングラスをかけた逆立った金髪の男性型アンドロイドに、同じく金髪ストレートのゴスロリ服の女性型アンドロイドだ。
初めての相手が距離感近く接近してきたので気まずく、とりあえず会釈をすると、相手もとりあえず「ども」と言って会釈をしてきた。
「お、お兄……早く出ようよ。こんなとこ……」
兄妹機だろうか?
確かに顔立ちや全体的なボディデザインはよく似ている。
だが、妹らしい女性アンドロイドは球体関節をわざと露出させた、過去の西洋人形を模したドール
彼のような
「妹よ。店を出るのはまだ、早い。ここで情報を集めるのだ。俺達はこれから秋葉
秋葉ダンジョン……?
この人たち……【冒険者】なのかな?
「い、いいよ……知らない人と一緒に行動するのなんて嫌だし……もうダンジョン潜っちゃおうよ」
「そうやって何にも知らないでダンジョンに潜るのがどんなに危険か。地元民の話を聞かないで山に入って遭難する話を知らないのか?」
「知らないよ……山登りなんてうちらアンドロイドしないし……何千年前の話だよ……」
「あの!」
思わず二人の会話に口を挟んでしまった。
当然、二人は鳩が豆鉄砲をくらったような顔で私を見る。
「えっと……どうしたんですか?」
兄の方が私の目を見て冷静に問いかけて来る。
「あの、あなたたち【冒険者】なんですか⁉」
私の、憧れの———。
人間の残した遺跡に潜って、古代の貴重な遺物を取って戻って来て博物館に売りさばくあの———!
人間の作った
「はい」と兄が答え、
「⁉」と妹が目を見開いて横を向き、
「やっぱり!」と私がテンションを上げた。
「じ、実は私【考古学者】を目指してまして、そのためには【冒険者】になって過去の人類の遺跡調査を少なくとも一回以上はする必要があるんですね! それなのに試験に落ちてしまいまして……」
同情を引くような表情で兄の方を見つめる。
「お気の毒に」
「あの……それでも私直ぐにでも【考古学者】になりたいんです! できれば今年中に!」
「それはまたどうして?」
「来年から税金が課せられるから……【考古学者】の成果が小さいことを理由に来年以降【考古学者】になるアンドロイドに対して給料の30%が持っていくことになっているんですよ⁉ 今の三十倍ですよ⁉ ひどいと思いません⁉」
「思います」
「ですから、今年中に【考古学者】に成っておいてたくさんの給料をもらってただ博物館で寝るだけの簡単なお仕事をしたいんです!」
「なるほど」
「だから、あの……! 私を仲間に入れてくれませんか⁉ まだ私には【冒険者】の刺客がなくて一人だとダンジョンを潜ることは許されませんけど、【冒険者】の資格がある人に同行する形なら許可されてるんです! それで、誰も見たことのないような過去の人類の遺産を見つけたら……考古学会から認められて【冒険者】にならずとも【考古学者】になることも可能なんです! だから、お願いします! 秋葉ダンジョンへ私を連れて行ってください!」
金髪の兄の方に向けて頭を下げた。
精一杯の
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