勇者召喚されたら、幼馴染の男の子が頼もしくて恋に落ちました

仲仁へび(旧:離久)

第1話



 主人公のユカリは、ある日突然幼馴染のタツオと共に異世界へ召喚されてしまった。


「いったいここはどこなの?」

「もしかして異世界召喚ってやつか?」


 気を失った二人が目を覚ました時、そこは見知らぬ土地の神殿の中だった。


 神殿の中にいた者達は、自分達がユカリたちを召喚したのだと言い、事の次第を説明した。


「ようこそ勇者様、誠に申し訳ございませんが、勇者様に力を貸していただきたい」


 どうやらその世界は、魔王の脅威に困っているらしい。


 魔物がキリがなく発生して、人々の村や町を襲っているとか。


 だからその世界の者達は、ユカリ達に勇者になってほしいと言った。


「そんなの無理です。私達、ただの学生だったんですから」

「戦う方法なんて、全く知らねぇよ」

「そうおっしゃらずに。どうか力をお貸しください。我々には、抵抗するすべがないのです」






 始めは無理だと考えて居たが、その世界の者達は必死だった。


 勇者なくして魔王に勝つ事はできない。

 これまでの歴史で、何度か魔王が復活していたが、その魔王を倒したのは必ず勇者だった。


「我々も手をこまねいていたわけではありません。どうにか自力で魔王を倒そうと考えました。しかし我々の力では歯が立たないのです」


 そのような事実もあってか、人々はユカリたちに魔王になってもらう他、生き延びる術はないと考えて居た。


 らちが明かないと思ったユカリ達は、元の世界へ円滑に帰るためだと、渋々頼みごとを引き受ける。


「分かりました。でも、準備はしっかりさせてもらいます。修行や訓練も納得いくまで行わせてください」

「装備品もしっかりしたのを融通してくれ。それくらいは、わがまま言っても良いよな」

「ええ、もちろんです! ありがとうございます勇者様!」


 危ない事がないように、様々な面で対策を立てるが。


 しかし、勇者の仕事は予想以上に過酷だった。


 ユカリは弟のように思っていたタツオを守りたいと思っていたが、実際はその逆でタツオに守られるばかりだった。


 ユカリは毎日、夜勇者の修行や訓練を行っているが、一向にタツオの実力に追いつけない。


 しかし、それでタツオを嫌いになる事はなかった。


 タツオ自身もまた、一生懸命に勇者としての実力を上げようとあがいていたからだ。


 毎日頑張るタツオの姿を見たユカリは、少しずつ気持ちを変えていった。






 魔王復活。


「魔王が復活した時は、いつも何人もの勇者が召喚されているのね」

「前回は十二人だったのか。多いな。でも今回は俺達だけ。困ったな」


 それは、通常なら十数人の勇者が、束になって立ち向かうべき災厄だったが、今回はたった二人。


 そのため、圧倒的に人手が足りなかった。


 ユカリ達は、頻繁に危機的状況に陥った。


「魔物の数が多すぎる。特異個体もいる。討伐の手が回らないわ」

「大丈夫だ! 諦めるな! 俺が何とかする!」


 しかし、その度にユカリはタツオの雄姿を目にする。


 ユカリや兵士達が絶望しそうになるたびに、叱咤し戦闘を切って魔物へ挑むその姿は、まさしく勇者そのものだった。


 それに比べるとユカリができる事は限られていて、後方で遠距離から魔法を使う事しかできなかった。


「タツオと比べると、一度に倒せる魔物の数は少ないし、威力は弱い、もっと力をつけないと」

「あんまり無理をするなよ。危ない時はちゃんと人を頼っていんだからな。俺だって、呼んんでくれればすぐに駆け付けるし」

「ありがとう」







 ただの幼馴染として見ていた存在だが、そのころからタツオに対する恋心を意識するようになっていった。


 ユカリには勇者の才能がないと思っていたが自然と、頑張るタツオの力になりたいと思うようになっていった。


 だからユカリは、危険な方法を試して、勇者の力を引き上げようとした。


「足でまといではいたくないわ。どうにかして力をつけないと」


 竜の秘薬と呼ばれる存在を知ったユカリは、その方法を試す。


 それは、苦痛を味わう代わりに、人間の潜在能力を呼び覚ますといったものだった。


 ユカリは、その秘薬を試すが、昏睡状態に陥ってしまう。


「ちくしょう。なんでそんな危険なものを試したんだ。一言俺に相談してくれればいいじゃないか」







 心配したタツオは、毎日ユカリの看病をこなして、目覚めるように願った。


 魔物との戦いが激しくなっていくなかでも、ユカリの様子を見る事を忘れる日はなかった。


 やがて一週間が過ぎた頃、ユカリは目覚めた。


「ユカリ! 起きたのか良かった!」

「ごめんね。心配をかけたみたいで」


 瞼をあけたユカリは、自分の体に眠っている力が大きくなった事を感じていた。


 それからは、二人で互いの背中を守りながら、今まで以上にスムーズに魔物と戦う事ができるようになった。


 各地で困っている人々を助け、魔物を倒しながら強くなっていく二人は、とうとう魔王に挑戦する。


 戦いは激しく辛いものだったが、二人は息の合った攻撃で魔王を撃破。


「たった二人でよく魔王を倒せたな」

「きっと竜の秘薬がなかったら危なかったわね」

「俺はまだ後の時の事、怒ってるんだからな」

「ごっ、ごめん」

「でも今は喜ぼうぜ。やっと倒せたんだから」

「うん」


 二人の勇者は、その世界に平和をもたらした。


 多くの人が二人の功績をたたえ、各地の吟遊詩人は新しい二人の伝説をこぞって歌いついだ。






 平和になった異世界で、帰還の準備が行われ、ユカリたちは元の世界に帰る事になった。


 平和な世界に戻った二人は、危険と皆無な日常を過ごすのだが、ユカリはタツオの雄姿を忘れなかった。


「私、タツオの事が好き。異世界にいっても、頑張って皆を励ましてたタツオの事が」

「俺も、ユカリの事が好きだ。これからもずっと一緒にいようぜ」

「うん」


 元の世界の日常に慣れた頃、ユカリはタツオに告白して、晴れて両想いになったのだった。


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勇者召喚されたら、幼馴染の男の子が頼もしくて恋に落ちました 仲仁へび(旧:離久) @howaito3032

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