断章 (*閲覧注意 イジメについて書いています)



 ――さて、今回のお話は少し……いや、かなり辛いかも知れないお話。読むのが辛いかも知れない人は飛ばしてもらって構わない。


 イジメについてだ。


 昨今、この問題は深刻化し、人死もしょっちゅう起きてしまっている。経験者も少なくはないと思うし、それがどんなに些細なことであろうとも、された人間は絶対に忘れられる事ではないし、今も苦しんでいるかも知れない。イジメ問題は世界中にあるし、それは最近起きたものでもない。紐解けば有史以来起きているだろうし、下手をすればニンゲンが集団を持つようになって以来、起こっている出来事だと思われる。


 少し話が逸れてしまったが、この『イジメ』は人間の最も根本的な問題だとも言えるだろう。他者を選別、区別し、排斥する。なぜその様な残酷な行動が当然のように行えるのか。立ち戻って動物にはないのかと思えばそんなこともないのだ。それは最も原始的で最も理にかなった取捨選択理由の一つ。


 ――生存本能から起こる排斥行動である。


 所謂、人間以外の本能でのみ行動している種にとって、群れと違う行動を取る者はその群れにとって死活問題となるからであり、病気になった者、怪我をした者、弱った者はその群れに居られないのが自然界の掟であり、そう言ったものから食物連鎖の一部になっていくのである。


 還ってこれを人に当てはめるのはどうかと思うが、本能でそれが刷り込まれている場合はどうかと思うと一考の余地は残るかも知れない。いや、決してイジメを肯定しているわけではない、それだけは断じておく。かくいう私もされた側の人間だからだ。幼稚園時代もそうだったし、小学生となり、暴れん坊として再臨しても尚、何人かのグループからは無視や、謂れのない暴力を受けたことがあったのだ。まぁ、私の場合はやられたらやり返すの精神が『修羅国育ち』の父に刷り込まれていたため、暴力には屈しなかったが、無視だけはどうにも出来なかった。昭和の時代は今ほど暴力が排斥されていなかったというのも現実で、教師もなにか問題を起こす生徒が居れば、よくぶっ叩いたりもしていた。平手でビンタ、時には拳骨。中学生時代代には、短く加工した竹刀を持った『熱血』体育教師も私の記憶にはちゃんと実在している。今では大映時代のドラマでしか見たこともないような教師が、あの頃は普通に学校には存在したし、今や絶滅危惧種となった『ヤンキー』も私の時代は華開いたばかりだった。


 そんなデンジャラスで、ハードボイルドワンダーランドな昭和時代であっても、イジメで人を物理的に切った張ったはしなかった。所謂「顔はまずい、腹にしておけ」と言った具合に殴る場所も限定されていたし、パシリと言ってもせいぜいがパンを買いに行かされたり、カツアゲ程度の物が多かった。まぁ、それでもキツイ事には変わりはないが。……今の時代のようにレイプまではしなかったし、自殺に追い込むまでは少なかったと思う。大抵が無視をしたり、プロレス技を掛けられたりと、反撃の余地は残っていたように思う。ただ……そんな私の周りでも一人、バカでどうしようもないクズは居た。ソイツはこともあろうか、自分よりも年下の低学年の子に失明をさせてしまう程の怪我を負わせ、それを自慢気に笑っていたのを皆で一斉にボコった記憶が残っている。



 ――私は『イジメ』が嫌いです。



 断言します。私はイジメそのものが嫌いですし、されるのは勿論、したいとも思いません。そんな事をするくらいなら、笑ってバカを言い合って居たいです。『イジメじゃないよ、イジりだよ』ってなんですか? 人を貶して何故笑えるのですか? そんな低能なことしか出来ないのですか? それともあなたはそう言う芸人かなにかなのですか? ノリが悪い? 空気が読めない? えぇ、構いません。私はそんなクソ詰まんねぇ空気は読みたくないし、そんな低俗なノリはしたくないです。



 ――されて嫌な事はしない――。


 

 教わりませんでしたか?


 小学五年生の夏休み。そのクズが起こした出来事は団地中を駆け巡り、結果として彼の家族は夏休み明けを待たずに引っ越していきました。その後の彼がどうなったのかは私は知りませんが、失明をした子が元気に学校で遊ぶ姿を今も覚えている。




 ――今も偶に見るSNSでの論争や、言葉の応酬合戦。

 主義主張を否定するつもりは更々無いけれど、他者を傷つけてまで自分の主張をゴリ押しして『ハイ論破!』……は、どうなんだろう。



 ――された人間はそれを忘れない。


 ――されて嫌な事はしない――。



 どうか、『日々是好日』でありますように。

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