番外編 もし好きな人に『好き』と送れていたら

第12話


 俺には好きな人がいた。

 涼風すずかぜ明日香あすか

 彼女はいつも俺に優しくしてくれた。かなりの美少女で何で俺なんかに優しくしてくれるのか、不思議なほどだった。


 日直の時、手伝ってくれたり、本を貸してくれたり。


 彼女の魅力はそれだけじゃない。


 時折見せる、可愛らしい天使のような笑顔。

 俺はその笑顔が好きだった。


 とある日の放課後。


「夕焼け綺麗だね」


「だな」


 俺は前々から言おうとしていた事を言おうとする。けど、緊張してなかなか言えない。手を組み直したりを繰り返す。

 でもやっとの思いで言えた。


「あの……俺と、連絡先交換してくれないか?」


「いいよ」


 涼風さんはすんなりと了承する。


「えっ、いいの?」


「うん」


 その日、付き合ってもいないのに、好きな人と連絡先交換出来た。


 それから数日が経つ。

 涼風さんとは少しずつだけど、関係を深める事が出来た。


 とある日の夜。

 俺は覚悟を決める。


 涼風さんに「好き」と伝えるって。


 涼風さんとキスがしたい。ハグがしたい。もっと触れ合いたい。デートがしたい。


 でもそれは、交際しないと難しいだろう。だから、告白するのだ。


 直接じゃ言えなかった。

 でもLINEでなら……。


『好き』と書かれたスタンプを押そうとする。でもスタンプじゃダメだ。思いが伝わらないし、ちゃんとした告白になっていない。


 だから文章を打つ。


『好きです。付き合って下さい』


 あとは送信ボタンを押すだけ。


 目を瞑り、押す。


 目を開けるとちゃんと送信されていた。しかもすぐに既読になっていた。


「よっしゃー! 言えた、言えたぞ」


 俺はガッツポーズをする。

 達成感が満ち溢れてくる。


 その日はなかなか寝付けなかった。

 そして、恥ずかしくてLINEが開けなかった。

 明日にはどんな返事が返ってきているのだろうか。


 翌朝。


 LINEを確認してみると――


『いいよ。私も杉崎くんのこと、好き』


 …………。


 俺は死ぬのか!? やばい、嬉し過ぎる!


 好きな人に『好き』と言われる。

 これ以上、嬉しいことなど他にない。


『杉崎くんは私のどんな所が好きなの?』


『優しい所、とか……か、可愛い所、とか。何より笑顔が好き』


 自分の顔が赤いのは鏡を見なくても分かる。さっきから動悸が止まらない。俺、かなり頑張ったと思う。


『杉崎くんにこんなに好かれてるなんて、私、幸せ者だね! これからもよろしくね』


 LINEの画面の向こうで、涼風さんはふっ、と微笑んだ気がした。


『ああ、よろしく』


『あ、そうそう。明日の放課後って空いてる? 杉崎くんとはもっとお話がしたいんだ』


『空いてるよ』


『そしたら、放課後図書室で待ち合わせでいいかな?』


『いいよ』


 こうして涼風さんと正式に付き合うことになった。


 図書室でどんな話をするんだろう……?

 何だか楽しみになってきた。







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