第11話


 目の前にそびえる大きな観覧車。

 これから、俺と麗羅はそれに乗る。


 観覧車には行列が出来ておらず、空いていた為、すぐに乗る事が出来た。


 狭い観覧車の中に男女が二人。

 何も起きないはずが無く――


「ふわぁぁ……眠くなってきちゃったっ。膝に頭、乗せていい?」


 上目遣いで眠そうな顔して、そう聞いてくる。これはつまり……膝枕ってやつ?


「いいよ」


 スッと麗羅は俺の膝に頭を乗せてくる。麗羅の頭は軽い。まるで小動物を乗せてるかのようだった。

 それから麗羅は語りだす。


「あたしね、律矢にLINEで『好き』って言われてすごく嬉しかったの」


「イメチェンする前のあたしって酷かったじゃん? でも、そんなあたしを好いてくれる人がいるんだって、分かって」


「だから、律矢そのひとの想いに応えたいって強く思った。だから、あたしは変わった。律矢がいなきゃ、あたしは変われなかったんだよ。あたしを変えてくれてありがとね」


「! 俺のほうこそ」


「実はね、あたし。律矢にLINEで告白される前から、律矢のこと好きだったんだよ」


「! そうだったのか」


「うん」


 俺に対する罵詈雑言も好きの裏返しだった。何かと絡んでくるのも、俺と一緒にいたかったから。

 そう考えると辻褄が合う。

 麗羅はその、複雑な恋心の存在に最近になって気づいたらしい。


 俺はというと、最初は彼女のことが嫌いだったけど、付き合っていくうちに大好きになった。今では彼女を離したくなくて、守りたくて、ずっとイチャイチャしてたい。そんな気持ちに彼女はさせてくれた。

 気づけば俺は涼風さんの存在を忘れて、麗羅に夢中になっていた。恋をしていた。


 ふと俺は言いたい事を思い出した。それは、きっといま言わなきゃ後悔する。


「あの、麗羅。LINEで告白したけど、それじゃ薄っぺらいし、物足りなくて。だから、改めて言わせてくれ――」


「――俺は麗羅が好きだ。大好きだ。ずっとそばに居させてほしい」


「勿論。これからもよろしくね、律矢。ちゅっ」


 刹那、麗羅は俺にキスをした。

 間接でも頬でもなく、唇に。

 短かったけど、長く感じられたキス。

 愛おしくて濃密なひととき。


 唇を離すと麗羅は告げた。


「ファーストキスが律矢で良かった」


「もう一回するか?」


「いいけど、もう着いちゃうよ?」


 悔しいけど、もうすぐ降りる頃合いだった。



 俺はあの時、送信先を間違えてよかった、と今になって思えた。じゃなかったら、こんなにも最高な彼女が出来なかったと思うから。


 この思い出は一生忘れない。


 夕焼け色に染まる麗羅の笑顔が、あまりにも美しすぎて――俺は心を奪われた。そして、また麗羅とここに来ることを誓った。



            〈本編 Fin〉




***

あとがき


ここまで読んで下さり、ありがとうございます。本編はここで完結となります。

次回より、番外編「もし好きな人に『好き』と送れていたら」がスタートします。こちらは涼風さんメインのストーリーとなります。ですが番外編も短編のつもりで書いているので、長くは続きません(多分2〜3話)。

最後までお付き合い頂ければ、幸いです。

 





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