第9話


 昼食の時間になった。

 適当に食べる場所を探す。


「麗羅、食べたい物とかあるか?」


「律矢の食べたい物なら何でも食べたい」


 本当に俺が決めていいのか? という思いもあったが、俺はラーメン屋の前で立ち止まった。


「ここはどうだ?」


「いいと思う」


 行列も出来ていなかったので、すんなりと店に入れた。店の殆どが硝子で出来ているので、外の様子も一望出来る。

 メニューはメインはラーメンだったが、ドリンクやデザートは沢山種類があった。


 食べたいメニューを選ぶ。

 俺はチャーシュー麺に決めた。


 麗羅はまだ迷っている。


「ラーメンはダメだよ」


「えっ……何でもいいって言ったのに?」


「あーん、が出来ないじゃん!」


 確かに。俺も麗羅にあーんされたい。

 けどもう、店からは出られない。


「デザートでやればいいんじゃないか?」


「そだね!」


 麗羅は塩ラーメンを選んだ。

 デザートは俺がティラミスで、麗羅が苺パフェ。どれも美味しそうだった。


 注文の品が届き、食べる。

 だが彼女は、飲み込むようにラーメンを食べ、あっという間に平らげてしまった。


「お前、食べるの早すぎないか?」


「だって律矢に早くあーんされたいんだもん」


「!」


 そんなこと言われたら、照れるだろ。

 俺も負けじとラーメンを早く食べ終えるよう、努める。


 ラーメンを食べ終え、食後のデザートが届く。

 まずは一口、自分が食べる。


 きっと彼女も俺と同じで間接キスしたいと思ってると思うから。


「あーん」


 麗羅は小さな口でパクリ、と食べる。

 口、ちっちゃくて可愛い。


 麗羅は顔を赤らめる。


「こういうのって、人前でやると恥ずかしいねっ」


「じゃあ、あたしからも。あーん」


 途端、苺の甘酸っぱい味が口いっぱいに広がった。てか、一番大きい苺、俺にあげていいのか?


 確かに彼女の言うように、人前でやると恥ずかしい。


 気づけば人々の視線は俺らに集中していた。

 きっと麗羅が可愛すぎるからだろう。どうせ皆、俺のこと妬んでるんだろうなー。間接キスとあーん、を同時に味わった俺は幸せ者だ。


「そろそろ行くか」


「うん」


「てか、一番大きい苺、俺にあげてよかったのか?」


「律矢は特別だから」


 何度、俺は麗羅にドキドキさせられるのだろう。心臓が破裂しそうだ。


「今度は間接じゃなくて――」


「なんか言ったか?」


「ううん、何でもない」


 麗羅は目を逸らす。


 恋人繋ぎをしながら、俺たちは次の目的地を目指すのだった。






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