第8話


 遊園地に着いた。

 俺と麗羅はジェットコースター乗り場を目指す。本当はいけないのだが、パンフレットを見ながらのながら歩きをする。もうすぐ目的地に着く。


 上を見上げるとジェットコースター。


「ここだな」


「違うでしょ! あっちだよ」


 俺が指さしたのは小型のジェットコースター。彼女が指さすのは最恐ジェットコースター。こいつまじで、怖いの乗る気だ。俺は絶望する。


「無理無理無理無理」


「あたしと乗るんだから、怖くないって!」


 麗羅に腕を引かれ、最恐ジェットコースター乗り場へ。


 既に行列が出来ていて、数十分は待つことになる。この時間、はよ過ぎてくれ。心臓のドキドキが煩い。


「暇だから、しりとりしない?」


「い、いいな……」


「声震えてるね」


「怖いんだから、仕方ないだろ」


 すると、麗羅は指を絡めてくる。彼女の指は白く細長くて、手は温かかった。


「こうすれば怖くないでしょ?」


 俺はコクリと頷く。確かに。


 そして、しりとりを始める。


「じゃあ、『しりとり』から始めるか。『しりとり』」


「『りつや好き』」


 これはしりとりと言えるのだろうか。

 でも俺も思ったことを言う。


「『きみが好き』」


「! ありがとう」


 しりとりは、ほんの数秒で終わってしまった。まさかしりとりで告白されるなんて、思ってもいない。二人の顔は赤くなる。俺はジェットコースターの存在も怖さも忘れてしまった。


「もうすぐあたし達の番だね!」


「……」


 せっかく忘れてたのに……。


 俺と麗羅は恋人繋ぎをした状態でジェットコースターに乗った。


「この手は絶対、離さないから大丈夫だよ」


「うん」


 ジェットコースターが上昇する。


「もうすぐ落ちるね」


 落ちる。


「ぎゃあああー」


 麗羅の前でみっともない声を上げてしまった。


「わああああー」


「律矢、可愛い」


 馬鹿にしている彼女の声は俺の耳には届かない。恐怖に耐えるのに必死だから。


 長いようで短かったジェットコースターがやっと終わる。手は「離さない」という麗羅の宣言通り、繋がれたまま。


「終わったね、楽しかったね」


「全然楽しくなんかねえよ」


「あたしと乗っても?」


 そう言われると返答に困る。


「いや、麗羅と乗ったら少しは楽しいかも」


「それは良かった」


 ふっ、と麗羅は微笑む。

 その笑顔はずるい。


「次はなに乗る?」


 少し歩くとカラフルなアトラクションがあった。男性向けというよりは女性向けだ。


「コーヒーカップとかどうだ?」


「いいね!」


 そうしてコーヒーカップに乗ることになった。目は回るが、怖くは無い。


 薄ピンクのコーヒーカップに二人は乗った。


 狭いから自然と距離は近くなる。

 互いの足が触れる。

 ドキドキする。


 まもなくコーヒーカップが作動した。

 俺は全力で回す。ジェットコースターの仕返しだ。


「わああああー。目ぇ回るよぉー。ぐるぐるするー」


 麗羅はヘロヘロに酔っていた。

 あんまり気持ち悪くさせない為に手加減はする。


 彼女は死んでいたが、無事コーヒーカップが終わった。


 彼女が歩けないくらいにクラクラしていたので、俺がおんぶする。すると、彼女は嬉しそうにしていた。まるで最初からおんぶを望んでいたみたいに。


「次、なに乗る?」


「律矢の乗りたい物なら、何でもいいよ」


「おけ」


 そんな感じで昼になるまで、俺たちは遊び尽くした。





 

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