第2話


 麗羅Side:


 あたしは隣の席の杉崎すぎさき律矢りつやのことが大嫌いだった。何かと癪に障るし、目障りだし、とにかく生理的にムリだった。一番、嫌いになったきっかけはあたしのプリントを回収するのを忘れたこと。しかも謝らなかった。後日、問い詰めたら謝ってはくれたけど。でも、キライ!


 あたしは気づいていない。

 この理由の無い、理不尽な『嫌い』は恋愛的な意味の『好き』と紙一重だということを。


 彼とのLINEのやりとりは一方的だった。

 あたしだけが沢山送って、既読スルー。若しくは既読すらつかない。たまに挨拶くらいはしてくれるけど(スタンプで)。

 でも、しょうがなかった。あたしがくだらないトークばかり送るから。罵詈雑言とか。


 今日も例外ではない。

 いつも嫌い、嫌いばかり送ってるから、偶には変化球も必要だと思った。『嫌い』と送っても既読はつかないし。


 だから、あたしはこう送る。


『あたしのこと、嫌いでしょ?』


 部活で疲れていた事もあり、LINEを送った後はすぐにお風呂に入った。


 湯船に浸かりつつ、あたしは独りごちる。


「別にあいつのこと、消えてほしいほど嫌いじゃないし。ただムカつくだけだし」


 身体を洗って、風呂場から出る。

 少し顔が火照っていた。


 どうせ来ていないLINEを開く。


 ――だが、来ていた。

 しかも既読がつく、とか挨拶とかではなく、愛の告白が。


『あたしのこと、嫌いでしょ?』


『好きです。付き合って下さい』


 はあああああ!?


 別にこんな返事、求めてたわけじゃないし。


 でも気持ちに相反して、スマートフォンを持つ手は震え、顔は林檎のように赤くなった。


 とにかくスマホをシャットダウンさせ、一度頭を冷やす。


 あたしは杉崎に散々酷いことをしてきた。そして彼もそれを喜んでいるふうには見えなかった。LINEのやりとりも一方的。

 今日の出来事といえば、あたしが教科書忘れたから、彼から強引に教科書を奪い取り、使った。『貸してもらった』というには少し無理がある。


 それを踏まえての、さっきの『好きです』の文字。


 嘘告? 送り間違い?


 誰しもそれを疑う。あたしも例外じゃない。


 疑いつつ、スマホを起動させ、さっきのLINE画面を開く。

 告白の文面は消されていない。

 その後のメッセージは無い。


 取りあえず、迷ったあたしはこう送る。確認の為に。


『え? あんたってあたしのこと、好きだったの?』と。


 杉崎から告白されて、あたしは意識してしまった。好きになりそうだった。気持ちを落ち着かせるのに必死だった。


 明日、あいつの顔、見たくない。

 顔が赤いって言われたくない。


 ああああ、どうしよー。


 明日から学校行けないじゃん!

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