好きな人に『好き』と送るはずが、嫌いな女子に『好き』と送ってしまった

依奈

本編 嫌いな女子に『好き』と送ってしまった

第1話


 俺には好きな人がいた。

 涼風すずかぜ明日香あすか

 彼女はいつも俺に優しくしてくれた。かなりの美少女で何で俺なんかに優しくしてくれるのか、不思議なほどだった。


 日直の時、手伝ってくれたり、本を貸してくれたり。


 彼女の魅力はそれだけじゃない。


 時折見せる、可愛らしい天使のような笑顔。

 俺はその笑顔が好きだった。


 とある日の放課後。


「夕焼け綺麗だね」


「だな」


 俺は前々から言おうとしていた事を言おうとする。けど、緊張してなかなか言えない。手を組み直したりを繰り返す。

 でもやっとの思いで言えた。


「あの……俺と、連絡先交換してくれないか?」


「いいよ」


 涼風さんはすんなりと了承する。


「えっ、いいの?」


「うん」


 その日、付き合ってもいないのに、好きな人と連絡先交換出来た。


 ――俺には嫌いな女子がいた。藤崎ふじさき麗羅れいら。休み時間にはからかってくるし、授業で間違えると嘲笑われる。彼女も俺のことが嫌いなのに、何かと絡んでくる。今日も例外じゃない。


「おはよ。あんたの顔なんて見たくない。死ね」


「俺も同じ気持ちだ」


 授業中。

 うっかり英語のスペルを間違えてしまう。


「こんな簡単な問題、間違えるなんて頭大丈夫? くすっ」


 死ねええええー。


 俺は麗羅に明日必ず死ぬ呪いをかける。


 もう麗羅は最低最悪の悪女だった。

 涼風さんを見習って欲しい。


 それから数日が経つ。

 涼風さんとは少しずつだけど、関係を深める事が出来た。


 とある日の夜。

 俺は覚悟を決める。


 涼風さんに「好き」と伝えるって。


 涼風さんとキスがしたい。ハグがしたい。もっと触れ合いたい。デートがしたい。


 でもそれは、交際しないと難しいだろう。だから、告白するのだ。


 直接じゃ言えなかった。

 でもLINEでなら……。


『好き』と書かれたスタンプを押そうとする。でもスタンプじゃダメだ。思いが伝わらないし、ちゃんとした告白になっていない。


 だから文章を打つ。


『好きです。付き合って下さい』


 あとは送信ボタンを押すだけ。


 目を瞑り、押す。


 目を開けるとちゃんと送信されていた。しかもすぐに既読になっていた。


「よっしゃー! 言えた、言えたぞ」


 俺はガッツポーズをする。


 その日はなかなか寝付けなかった。

 そして、恥ずかしくてLINEが開けなかった。


 翌朝。


 LINEを確認してみると――


『え? あんたってあたしのこと、好きだったの?』


 俺の嫌いな女子、藤崎ふじさき麗羅れいらからLINEが来ていた。


 送信先、間違えたぁー! 終わったぁー!













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