第三話 どっちも違ってどっちも良い。(あ、ヨダレでた)
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万葉集 作者未詳
* * *
翌日。
「
恥じらいつつも、そう嬉しそうに述べた
もちろん、肌はきめ細かく、……姉妹ゆえか、二人の肌の手触りは似通っている気がする。えへへ……。
「あぁ……、これで良い、ですか……。」
と顔を真っ赤にしながら、億野麻呂の求めのまま従順に、大きなお尻を高く掲げてみせた
───一生この眺めを見続けても見飽きることはあろうか。いや、無いっ!
オレは幸せだなぁ。
と億野麻呂にしみじみと思わせた。
「久君美良姉さまが黄泉渡りしてから、随分、世界が変わりました。
あの時、お姉さまが泣き腫らした目で、あたしにぽつんと言った言葉が、今でも忘れられません。
……これまであんなに優しくしてくれていたのに、この仕打ち。
信頼できる
あたし、お姉さまが傷ついているのに、何もできなくて。
これから、
(可哀相に……。二人とも傷ついて……。
きっと、
優しい
億野麻呂は目をつぶる。
(安心しておくれ。
「もう、怖くない。オレが側にいる。
「億野麻呂さま……。
やっぱり億野麻呂さまは、素敵なお方。
前に、久君美良姉さまと話をなさっていた億野麻呂さまは、久君美良姉さまがどんな態度でも、穏やかに接してくださっていました。
あたしと
それだけでなくて、久君美良姉さまが黄泉渡りしてから、億野麻呂さまは、
あたしも姉も、木簡を見せていただきました。
臨泉路娘子 怛艱難凄愴 我此為歔欷
(
伎波都久乃 乎加能久君美良 花開者 常哉将戀 弥年之羽尓
(
意味は……。」
億野麻呂は続きを引き取った。
「意味は、
オレは、久君美良とちゃんと会って、どんな人か見ていたから。
久君美良が、罪に問われるような事をしたとは信じられないし、今でも信じていない。
それを、伝えたかったんだ。
……ちょっと恥ずかしいな。
ただ、木簡と、花を贈っただけだ。何も、価値のある金目のものを贈ったわけでもない。」
億野麻呂は苦笑し、自分の頬に赤みがさすのを感じた。
億野麻呂のはだかの胸に、温かい涙がつたう。
「いいえ! いいえ!
姉の不名誉な死に、我が家から、さーっと人波が引いていくなか、あのような心のこもった贈り物をしてくださったのは、億野麻呂さま、一人きりでした。
どんなに、あたしの家族が心救われたか。感謝したか。言葉に尽くせません。
しかも、久君美良姉さまは、あんなヒドイ返事を億野麻呂さまにしたのに……。
あたし、できることなら空をはばたく鳥になって、億野麻呂さまのもとに行きたかった。
でも、当家から、
諦めて、でも、ずっと……。
億野麻呂さまを覚えていたんです。
あの日、たまさかに(たまたま)市で会えて、あたし達がどんなに嬉しかったか。うあ……!」
ああ、あああ、わああ……、と、何もかも絞り出すように、
億野麻呂はその涙を受け止めた。
しばらく泣いたあと、
「億野麻呂さまこそ、あたしと
どうか、あたしと……、
あたしたち姉妹、心から億野麻呂さまに仕えますわ。」
そう言って、可愛らしい顔でにっこり華やかに微笑んだ。
「もちろん、大事にするよ。
「はい!」
安心した顔の
婚姻して、二十日ほどは、同じ屋敷の別の部屋に住む、
(幸せが過ぎる。オレ、こんなに幸せで良いのかなー?)
と呑気に思う日々であった。
しかしある晩、
「ど、ど、どういう事でしょうか……。」
つい億野麻呂が丁寧口調になって
↓挿し絵です。
https://kakuyomu.jp/users/moonpost18/news/16817330665872501408
* * *
※読み飛ばしていただいてけっこうですが、気になるよ、という方のために。
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