生まれいづる

ninjin

第1話

潮の薫り


僕だけのものだった


潮の薫り



金星が 瞬いている


僕だけのものだった


金星が瞬いている



ちゃぷちゃぷと波の声


僕だけのものだった


ちゃぷちゃぷと波の声



どこかの家で カリャリと扉の鍵が掛かった


それさえも 僕だけのものだった


どこかの家でカリャリと扉の鍵が掛かった



対岸の灯りが 蒼白く


僕のものだった


対岸の灯は 蒼白く 僕の往くべき道を示す


僕のものだった



そう


総て 僕のものだった



ある日 「君」というひとに出会った


僕のもの・・・


あれ?


「君」だけは 僕のものではないと気付かされたとき


僕は「君」のことが欲しくて堪らなくなって


僕は


僕が


生まれて来た意味に


初めて気付いたんだよ


   


      おしまい


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生まれいづる ninjin @airumika

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