本当のこと
紫蘭。
すれちがい
私には付き合って7ヶ月の彼氏がいる。
彼は大学3年生。サークルに入っていて人脈も広い。私と彼は違う大学に通っている。
私は大学2年生。半年後の留学の準備で、勉強に焦がれる日々。でも、去年の花火大会で彼を見つけて私は惚れた。私史上最高の勇気を出した。
「私と連絡先交換してください」
無理って言われるのはわかっていた。いきなり知らない女から連絡先を交換して言われたらそれは嫌だろう。
「これです」
ーえ??
頼んだのは私。だけど、想定外の答えに私の時間は止まった。彼を見上げる余裕なんてない。きっと今の私の顔はひどい。
「あ、、ありがとうございます。」
「じゃあ」
この日はこれっきりだったけどそこから連絡を取って、電話して、遊びに行って、付き合ったってわけ。
今日は彼と映画デート。
7ヶ月経っても会えるだけで嬉しい。
私はこの日のためになら嫌いな勉強も頑張れる。
「映画何見る?」
「えー、、なんでもいーよ」
「なんでもいいってむずいんだけど」
「別になんでもいい」
「今から流行ってるらしいしこれにしよ!」
「おっけー」
そして映画を見た。
エンディングがおわっても私たちはその映画の世界に浸っていた。
「すっごくいい映画だったね」
「最高すぎた」
「このあとどーする??」
「まかせる」
ーえ?映画はなんでもいい。この後の予定も私に任せっきり。
ー私といてもたのしくないの?
ーデートは義務だと思ってるの?
ー早く帰りたいの?飽きたの?
そんなことが私の心中をかき乱す。
でも、私のことを好きだという。
私にはよくわからない。
結局この日はこんな感じで、私は悲しかった。次のデートが楽しみだとは思えなくなった。
ーもう無理だよ別れたい
一時の感情に流されてはいけないことはわかってる。彼にも感謝しないところがあることはわかる。
理解できることと受容できることは違う。
私たちは違う環境の中で変化するお互いにどこか違和感を持っていた。
そう思った。
ーもうこんな日々は嫌。別れたい。
「あのさ、別れたい」
「え?なんで?」
「なんでってどういうこと?私といても楽しくなさそうじゃん」
「・・・」
「じゃあね。今までありがとう。」
ー別れてしまった。本当はまだ好きだったのに。 彼はいったい何を思ってたんだろうか。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
振られてしまった。
俺は今でも好きなのに。
「じゃあね。今までありがとう。」
俺の中で時間は止まっていた。
そして俺は壊れた時計のような日々を送る。
俺はまだ、あの時に取り残されている。
ー最後に見た映画楽しかったな。
ふと思い出す。
俺はただ、彼女の隣で映画を見れるだけで幸せだった。だから映画が何かなんてあまり関係なかった。
ーこれか。
やってしまった。多分彼女にとってはなんの映画を見るのかも大事だったんだ。
ーくそ。
申し訳なさと情けなさと後悔が一気に押し寄せてくる。そして俺の心をえぐる。
俺はただ、彼女の隣に居られるだけでよかったんだ。
それを、「口にすればよかった。」
本当のこと 紫蘭。 @sakuranbonotane
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