特殊能力(神のご加護)
「何だあれ?」
睡蓮先輩が気の抜けた声で言った。
櫟の命はかかっているのに、こんな時に何事だ?と思い、指をさしている方向を見ると、そこには火柱が天まで貫いていた。
火柱?どうして、何もないはずの山奥で天まで伸びる火柱が?と疑問に思い、櫟のいる場所を確認するためにスマホを開いた。
すると、そこには驚くべき名前が載っていた。
私は、スマホを
なぜなら、スマホには櫟という名前はなく……
『聖女アメリア様』という文字が表示されていたからだった。
睡蓮先輩は、小難しそうな顔をしながら言った。
「……これは……大変なことになりそうだな」
「大変なことってなんですか?」
素朴な質問を私は返した。すると、俯いて考えていた睡蓮先輩は顔を上げて言った。
「私の予想なんだが、この『聖女アメリア様』と言うのは、櫟のことだ」
先輩の言った瞬間、私と花韮の表情はハッとした顔に変わる。
現実的ではないことに、何も言い返せずにいると先輩は続けた。
「私たちには、『
「代償⁉︎」
「あぁ、代償だ。この代償は、ランダムで選ばれて……例えをあげるなら、友達から
その話に、食いついたのは花韮だった。私は、そんな危ないことを今させられているのだと少し後悔をしたのだった。
「消えると言うことは、親からもですか?」
「えぇ、聞いたことはないけれど可能性はあるわ。そして、一番最悪なのが……」
「最悪なのが?」
私は恐る恐るオウム返しをして言った。
先輩は、向きを変えて私たちの背中を見せながら言った。
「『子宮』だ」
「「⁉︎」」
先輩の発言に、私と花韮は言葉を失った。
一番最悪……と言われている理由が何となくわかった気がしたからだった。
沈黙が続くと、睡蓮先輩は私たちの肩を叩いて言った。
「今は、そんなことより‼︎櫟を助けにいかないとな‼︎」
「はい」
「そうですね」
私たちは、それそれの返事をして火柱の立っている場所に向かうのだった。
◆◇◆◇
洞窟の中で、覚えていると入り口あたりが騒がしかった。
沈めていた顔を上げると、そこには
見た瞬間、私の思考が止まった。
何をすれば良いのか……
すると、辺りが白い光で包まれた。
目の前が眩しくて、思わず目をつぶってしまった。
目を開けると、そこは真っ白な空間でその中央に一つ椅子が置いてあった。
訳がわからず、あたりを見渡していると中央の椅子に人影があり視線をそちらに向ける。
座っていたのは、白い服を着て赤髪な髪をした人だった。
彼女は、私のことを手招きしていた。行っていいのかわからなかったが……今の私には誰かが必要だと思い、見知らぬ赤髪の座っている人の方に向かった。
近づくと、彼女は立ち上がり言った。
「ようこそ。選ばれたか弱き少女よ。」
何と返せば良いのかわからずに黙っていると、私の目の前まで近づいて囁くように言った。
「あなた今困ってますね──」
小さく頷くと、彼女はそっと微笑んで言った。
「私の力が必要かしら?」
「力……?」
「えぇ、私はあなたたちの世界でいう神様だもの」
「⁉︎」
驚いた表情をすると、彼女は苦笑いしながら途切れ途切れ言った。
「まぁ……神様と言っても……大地を変動や天候を変更する『神の怒り』の張本人ではないんだけどね……まぁ、私も苦労したよ──」
「それは大変でしたね……」
なるべく、目を合わせないように下を向きながら言うと……
「で、あなたは今危機的状況に陥っているわよね。私が助けてあげようか?」
「はい……ですが…助けると言ってもどうやって……」
「まぁ、見てなさい‼︎」
そういうと、彼女は私に何かを手渡し。
それと同時に、目の前が再び眩しい光に包まれた。
眩しい中、彼女の声が響き渡る。
「──私の名前は、アメリア。聖女という者よ」と。
目を開けると、現実に戻っていた。
手元を見ると、謎のブレスレットがあった。これは何だろうと思っていると……
突然、ブレスレットが光出して……
「『適性者。
どこからの声か、わからないがあたりに響き渡った。
次の瞬間、私は赤色の炎に包まれた。
そして、魔法少女のように制服を剥がされて専用の服に着替えさせられた。
変身が終わると、手には剣があった。
そして、私は謎の自信感に満ち溢れて……
「おらあああああああああ‼︎」と声を荒げながら敵に突っ込んでいくのだった。
敵を蹴散らすと……
遠くの方から、仲間の声が聞こえてきた。手を振っているので、私は振り返そうと手を上げた瞬間……
「うっ……」
身体中に激痛が走り、倒れ込むのだった。
◆◇◆◇
私は声を上げて言った。
「あきなあああああああ‼︎」
一番に、地上に降りてあきなの体を支えながら応答を待った。
だが、一切返事は返ってこなかった。
睡蓮先輩は、あきなの首元を触って微笑みながら言った。
「意識はあるみたいだ。だが、起きるかはわからない。まだ、新人なのに頑張るよねあきなは。最初から、
「ですが、今回の敵は
花韮が、冷静な声で言った。
睡蓮先輩は静かに頷く。
私は、地面に優しく置いて……起きるのを待とうと目を離した瞬間……
「あきな……?」
花韮が、珍しく感情を込めた声でポツリと呟いた。
私は振り返って、見ようよ思ったが睡蓮先輩に抱かれ見れなかった。
私は、睡蓮先輩を退けてみようと思ったが……
「ダメだ‼︎」
珍しく、怒りながら言った。
初めて、怒った声を聞いたから少し見るのを躊躇ってしまった。
私は、先輩に言った。
「どうなっているんですか……?」
睡蓮先輩は、私のことを抱きしめる力を少し強くなった。それほど、いうのが辛いのだろうか。
数十秒間、間を開けて先輩は言った。
「……聞いて驚くなよ……今、
言葉を聞いた瞬間、現実ではないと思い始めて……涙が溢れてくるのだった。
すると、聞きたくない声が私たちの元に響き渡る。
「皆様方。お車が壊れてしまったのでここからは歩きで行きます。」
私は、声を荒げて言った。
「ふざけんなよ‼︎こっちには怪我人がいるんだぞ‼︎」
だが、返答は一切返ってこなかった。
睡蓮先輩は、花韮にあきなを持たせて朝百合中学校に向かうのだった。
聖女様の嫁入り 〜若き少女たち〜 秋伯(しゅうはく) @warawa
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