第五〇話 ジュワッチ!

第50話



「は~い。わたしなんだが、頭痛と体がだるいです」

わたしは、本当に体がだるくなってきたので手をあげました。


「え?エルーシア様」

「聖女様?」

みんな心配になったようで、視線がわたしに来ています。


ふらふら

(ああ、もう駄目だ)

わたしは、自身の体を支えきれなくなり、すぅーっと後ろに倒れはじめました。


ギュウ


「全く、うちの孫は本当に無茶するから」

そう言ってわたしを後ろから抱きしめて支えてくれたのは、お祖母様です。


お祖母様支えてくれてありがとうと思っていると

キラーン ほわ~ん 

わたしは急にオレンジ色の光に包み込まれました。

(わたし魔法使ってないよ?)


「エルーシアちゃん。魔法の使いすぎですよ。

具合が悪くなっているのは、魔力が欠乏しているからよ」

お祖母様は、わたしを支えたまま正面にきて、視線の高さを合わせてくれています。

「いま、魔力回復の魔法を行使したので、少し体が楽になったでしょう?」


「ばぁば、わたしは、魔法の使いすぎで、魔力がなくなったの?」


「そうよ。そして私の魔法で、エルーシアちゃんの魔力を回復させたのよ」

お祖母様は、笑顔です。

そして、右の手のひらをだしてきました。

「エルーシアちゃんの魔力の器は、とても膨大で私の魔力の譲渡だけでは、全然足りなかったわ。

だから、この魔石を使って魔力を回復しなさい」


わたしは、水晶のように透明でキラキラ輝いている魔石を手に取りました。


「この魔石は、エルーシアちゃんが、倒したオークの魔石よ」


「ばぁば、ありがとう。わたし王都の冒険者ギルドで換金したときに、魔石も売ったよ」


「冒険者ギルドのマヤが、エルーシアちゃんは、必ず必要になるかと、魔力もいっぱい入るようにして渡してくれたのよ。

魔石を握って魔力が自身の体内に入り込むイメージをすると、魔力が回復するわ」


「やってみます」


わたしは、エナジードリンクを飲んで頑張る陽菜時代の父さんを思い出しました。

その瞬間 

わたしは、赤と黄色の光に包まれ、魔力がドンドンと満たされていくのを感じました。


魔力満タンです。わたしは両手を挙げて、空を見上げました。そして、ジャンプ!


「ジュワッチ!」


わたしは、数十㎝飛び上がっただけで、そのまま地面に足が着きました。

ウルトラマンのように飛ぼうとしました。

が、当たり前ですが、飛べませんでした。

お祖母様は、急にどうしたのと考えているようで、目をまん丸にしています。


「あらあら、エルーシアちゃん。どうしたの?

魔力回復に失敗したの? それともまだ熱があって意識が混乱しているのかしら?」


(元気が満ちあふれてきたので、ウ○トラマンみたく飛べると思ったのです。陽菜時代の父さんの影響が、特撮ヲタクの父さんが悪いの)

そんな事はこの世界では言えないので、

「魔力が満タンに回復すると、空さえも飛べるとフレイヤ様から聞いていたので、試してみたの」

そう言ってごまかしてみたところ


「飛べなかったわね。エルーシアちゃん」


「ばぁば仕方ないの、わたしはまだ五歳だから空を飛ぶのは無理みたい」


「そうね。お空を飛ぶとしたら、古竜様の加護をもらうのが手っ取り早いわね。

後は、風属性魔法だけでは、駄目なので他の属性魔法の合わせ技になるかもね」


(でも、ちゃんと念じたら飛べるようになるのよね。飛ぶ魔法がなければ、つくればいいのよね。でもそれだと、ただお空に浮かんでいるだけになってしまうわね)

「ばぁば。驚かせてごめんね。この魔石に魔力を込めるのは誰でも出来るの?」


「魔物を倒して、獲得した魔石を使って魔力を込めると、本人かそれに親しい人だけしか使えないのよ。だから、冒険者ギルドか、錬金術師にお願いすると込めた魔力が誰でも使えるようになるわ」


「へぇ。今わたしが使った魔石は、ばぁばが魔力を込めたの?」


「そうよ。素の魔石なので、ばぁばと親しい人だけが使えるのよ」


(そういうことは、わたしとお祖母様は、心の距離が近いということね。

捨てられても、孤児院でなくて、お祖母様の所に行けばいいかも)

そんな事を考えながら、あげた両手をおろして、お祖母様に抱きつきました。


「あら、まあ。エルーシアちゃんが抱きついてくるなんて珍しいわね。

もっとこの幸せを堪能したいけれど、病人をもっと助けないといけないわよ。

エルーシアちゃん」


わたしは、そのときお祖母様の後ろにいるお祖父様に気づいてしまいました。

お祖父様は、にこやかな顔をして

両手を広げています。


わたしは、それを無視して

「その前にオークおじさんの回収をしないといけないわ」

わたしは、ハラグに目を合わせました。

ハラグはウンとうなずき、ここから見てちょうど建物の裏側にあたる部分を指しました。

(そうか。裏側にいたから、ここから見えなかったのね。しかもここに雷が落ちたと思うけど、建物には影響がないようね)

そう思って、ハラグと移動しようとした時、変な視線を感じました。


「エルーシアちゃん。じぃじは、待っているよ」


そうです。お祖父様は、いまだに腕を広げて待っていたのです。

バッコーン!

お祖母様は、お祖父様の背中を叩きました。

「バルデマーいい加減にしなさい!エルーシアちゃんは、忙しいのよ!」


「ジョリーナは、いいよな。エルーシアちゃんとハグできてさ」


「あなたは子供ですか~!」


「えっとハラグごめんね。この二人は放って、メフェストの所へ行きましょう」

わたしは、ハラグにメフェストのいる場所を催促しました。


「はい。どうぞこちらです」


わたしは、祖父母の夫婦喧嘩をスルーして移動しました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る