第五一話 ぐぇ ぐぇ

第51話



教会の入り口から見て裏側に大きな木がありました。

そこに、ザビエル・・・・・・じゃなくて、カッパでもなくて、えっと頭頂部がツルツルのおじさんが、「ぐぇ ぐぇ」と声をあげています。

「ねぇ。あの木に縛られているのは誰?」


「何を言っているのですか、エルーシア様」

ハラグは、木に縛られている人をじぃっと見つめました。

「え? あ! うっ 」

ハラグはあたふたしています。


「どうしたの?」


「た、大変です。メフェストが逃げて違う人間が縛られています」

わたし達は慌てて木に近づきました。


「ぐぇ ぐぇ ぐぇ」

木に縛られている人は、リズミカルに声をあげています。

よくよく見ると、悲鳴?がする前に、ビリッと電気が脳天に当たっているのが見えます。


(あれ?もしかして、雷の電力が小さくなって、おじさん→地面→木の根の所→木の枝→はげ頭(おじさん)→地面と循環している?)


「ぐぇ。お前が ぐぇ エルーシア ぐぇ か~ ぐぇ いきなり ぐぇ 雷あて ぐぇ やがって~ ぐぇ」


ザビエルおじさんは、頭頂部にバッチと音がする度に『ぐぇ』って叫びます。

壊れた玩具のようです。


「その声は、もしかして。メフェ―― 」

ハラグの言葉が終わる前に

「てめぇ ぐぇ この ぐぇ ハラグぇ」


「ああー。もううるさい!」


ドドーン!


「ぐぐぇー」


わたしは、思わず雷の魔法を どどーん と、ぐぇおじさんにあてました。

そして、怒りにまかせて発動した魔法は、初めての無詠唱魔法の成功でした。

初めての無詠唱で、ぐぇおじさんの意識を狩りました。


「えっと。ハラグ先程の言葉を続けて」


「その木に縛られ気を失っているのは、間違いなく、メフェスト枢機卿です」


「えええええええ!神界でフレイヤ様と見たときは、ハゲていませんでしたよ」


「エルーシア様。確かにメフェスト枢機卿は、ハゲていませんでした」


「じゃ。カツラ?」


「いいえ。周りもよく見てください」


わたしは、メフェストの周りを観察しました。

左右前後どちらを見ても樹に縛られているのは、カッパおじさんだけです。

わたしは、解らなくて頭を左右に振りました。降参です。


「エルーシア様。よくご覧ください。あのデブの頭の上には、金のブレスレットが引っかかっています」


(ああ、確かに)


「そして、デブの首には、でっかい金で出来たネックレス」


(確かにしているわね)


「そして、デブの下には、金のチェーンが、足下から木の根っこまで落ちています」


(確かに、金のチェーンが切れて、足下から木の根まであるわね)


「それで、雷が循環して、メフェスト枢機卿をハゲにしたのではないでしょうか?」


「そうかな?」

わたしは雷属性魔法の雷を極小さくしてハゲめがけて発射しました。


ビリッ

「ぐぇ 」 「ぐぇ」 


「ああ、うるさい」

ドドーン

そして、また雷属性魔法で失神させました。

「ね。エルーシア様。巡回するでしょう」


「確かにね。これは偶然にしても出来すぎでしょう」


「女神様の思し召しでしょう。きっと」


「そうね。フレイヤ様は、怒っていたと言うよりも呆れていたからね。

でも、このおじさんが、本当にあのにっくき枢機卿?」


わたしは、他の神職者に縄をとかれて、地面に寝かされたハゲ頭を見ました。


「ルーン文字!?」

 わたしは、頭にルーン文字が刻まれていたのを確認したのです。

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