第四八話 エルーシア(五歳児)の言う事は絶対です

第48話



「ベルティンブルグ内の教会は解体します。

そして、王都での献金も中止します」


わたしは、声高らかに宣言しました。

神職者達は、「そ、そんな」とか「罪が重すぎる」など聞こえてきます。


わたしは、神職者達を見渡します。

顔を真っ赤にして声をあげて怒っている者、顔が真っ白になり下を向き、口を閉ざしている者。 

ハラグは黙ってわたしを見つめています。


「あ、そうか。そうだよな。公爵家当主の私が蹴飛ばされる所、フレイヤ様とエルーシアちゃんは、見てたんだよなぁ。領地内の教会の解体もありえるよな」

お父様は、自身が枢機卿に蹴られていたことを、思い出しこの結果も当然と考えているのでしょう。

特に反対意見もわたしに言ってきません。

「わたしは、フレイヤ様から言われたことがあります」

ガヤガヤ騒いでいた人達もわたしが声を出したことによって静かになりました。


「フレイヤ様は、ため息をしてこうおっしゃいました。

『今の教会は、腐っているわ。特に幹部は自分の欲にまみれて、私を敬うのではく、お金第一になっているわ。本当に嘆かわしい。

それで、私は決意しました。エルーシアやってしまいなさい』

(本当はそんな事言われていないけれどね。嘘も方便よ

しかもちょっと徳川家の副将軍の黄○様みたいに言ってみました)


そうおっしゃったのです。

だから、ベルティンブルグの教会は全て解体です」


「エルーシア様。私達教会の者は、これからどうやって生活していけばいいのでしょうか?」


「知らないわよ。ぼーっとしてんじゃないわよー!」

わたしは、某公共放送の五歳のおかっぱ娘のように叫びました。


「えええ!」

大騒ぎする、神職者を前にお母様は、

「そこは突き放さないで、寄り添うところよ。エルーシアちゃん」


「ふふふ。そうですよね。お母さん。

でも、今のこの人達は、自分の保身は考えることが出来るけれども、自分で何をすればいいか等まったく考えていないわ。

人に言われてやっと動く人達なのです」


「エルーシアちゃん。我が娘ながら本当にキツいわね」


「でも、この世の創造神である、フレイヤ様を信仰することは、悪いことではないし、むしろ良い事だと思うのです。

(道徳―― 人が善悪を判断するための規準となるものとしては、必ず必要ね)

解体とは、今の心根の腐った上層部がいる教会を辞めてしまって、教国の権力がおよばない、新たにフレイヤ様を信仰する宗教、もしくは流派をつくる事を言っているのです」


「そのような事をいきなり言われても、私達は本当に路頭に迷ってしまいます」


「わかりました。先程の自分で考えなさいの言葉を取り下げますわ」

わたしは、ニヤッと作り笑いしました。

「ベルティンブルグ領地内で、しっかりとフレイヤ様を信仰して世のために、領民達の心の支えになってくれる方は、この領地に残ってください。

ベルティンブルグ一家が、新しい教会を後押しします。

ねぇ、お祖父様、お父様いいですよね?」


「ああ、今までの教会に渡していた金額を新たな教会に寄付するだけでも、充分にやって行けるだろう。上納金もないだろうしな」


「そうだな。リカードが言っている通りじゃ。王都での寄付も今後一切取りやめるのじゃ」


「神職者の皆様判断してください。フレイヤ様のお話を直接聞けるわたしとこの領地でやっていくか。それとも、お金などの欲に支配されている教会に残るか。

わたし達はどちらに行ってもかまいません。ご自身で判断をしてください」


「エルーシア様。私、ハラグはベルティンブルグを住みかにして、フレイヤ様の信仰と、奥様の事業に協力いたします 」

司教のハラグの声に神職者一同驚いた顔をしています。


そうよね。司教と言えば、教会の幹部ですものね。

今の地位をすてて、ここに残り苦労をするとは、普通は考えないわよね。


「私も残ります」

「僕もここで、気持ちをあたらたにして、フレイヤ様を信仰いたします」

「司教様を中心に盛り上げていきます」


「皆さんのお気持ちは受け取りました。

今、このように話している時にも、領地内では、病に苦しむ方々がいらっしゃいます。

聖属性魔法、水属性魔法で回復魔法を使える方は、わたしにお力を貸していただけないでしょうか?」


「「「「はい お手伝いします 」」」」

神職者の全員が、手伝ってくれるようです。


「ここにいる神職者は、公女様に癒やしの魔法を使うために集まった者です。

エルーシア様のお力に比べると微々たるものかも知れません。

ですが、我々全員がお力になります」


「ありがとうございます。ハラグ。今後の事は、病を終息してからにしましょう」


「はい。今は全力で魔法の行使に力を入れます」


「ところで、ハラグ」


「はい。何でしょうか?エルーシア様」


「わたしが、聖属性魔法を使えるのは知っていたのかしら?」


「はい。王都でヘルヴェルと偽名を使っていたようですが、ベルティンブルグの司祭(牧師)以上の者は、ほとんどが知っています」


わたしは、がっくりと肩を落としました。

そして、お祖父様とお祖母様を睨み付けました。

お祖父様もお祖母様も、そーっとわたしから視線を外しました。


「しかし、この情報は私から情報を知らせぬようかん口令を引いたので、教国の者はもちろん、王都の神職者でも知る者は、いないはずです。

そして、エルーシア様がヘルヴェルとわかっているのは、私だけです」

ハラグは、ドヤ顔をして、胸を張っています。


(あちゃ~。ここで言ったらみんなわかっちゃうじゃないの!)


「ハラグ貴女みんなにバラしたの気づいているのかしら」

わたしは、ハラグを睨み付けました。

ハラグは口を手で隠しています。

(口を押さえても、今更、遅いわ)


 わたしは諦めて、病を治すことを優先しました。

《ここに集まっている使用人そして、近くに住んでいる全員に、流行病の完治と回復魔法をお願い》


ピッカー キラキラキラ ピッカー!!

わたしは、金色に輝き、それは金色の星になり周り一面を星か囲みました。

そして、ぐるぐるお星様が回っているとお星様で囲んでいる領域がものすごい光でつつまれました。


「すごい、すごすぎる」

「こ、これは 超強大なエリアヒール?」

「エルーシアちゃん。さすが」

などなど聞こえてきます。


わたしは、使用人の偉い人に向かい

「これから、わたし達は病人の治療に向かいます」

貴方たちは、教会に行き炊き出しをしてもらいます。

すぐに行動して」


わたしは指示をだして、神職者を連れてベルティンの街へ向かったのです。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る