第四七話 祖父母参上

第47話



「エルーシア様が、女神様とお会いになっていた!」

「女神様は本当にいらっしゃるのね」

「さすが、エルちゃま」

「フレイヤ様とお目にかかるのに、身嗜みはきちんとしていたのかしら」


肯定的なベルティンブルグの使用人達に対し

「高熱で夢をみていたのよ」

「そんな馬鹿な。毎日お祈りを誰よりもしている我々も女神フレイヤ様にお目通りしたことないのに」

「公女といえども、嘘はいけないわ!」

神職者達はわたしをぼろくそ言います。


そんな騒ぎを鎮めたのは、


「エルーシアちゃん~。じぃじが来たぞ!もう大丈夫だ。根拠はないが」

「エルーシアちゃん。ばぁばも来たわよ。私の水属性魔法で、少しでも回復してあげるわ~」


そして、二人はピタッと立ち止まり

「おや、リカードよ。お前は、枢機卿にぼろくそにされたのでは?」

「まあ、エルーシアちゃん。ベッドで寝ていたのでは?」


「リカードも」

「エルーシアちゃんも」

「「元気そうね」」


二人は、場の雰囲気をガラリと変えてしまいました。


「父上。私は、エルーシアちゃんの魔法で元に戻りました」

「ばぁば。わたしは、フレイヤ様の力を借りて、自分で回復したよ」

「おお!」

「まぁまぁ」

「「さすがエルーシアちゃん」」


(さすが、お父様のお父さんとお母さんね。見事に場の雰囲気を壊してくれたわ)

「じぃじ。来たばかりで、疲れていると思うけど、神職者の人達が、わたしがフレイヤ様と一緒に居たと言っても信じてくれないのです」


お祖父様は、真顔で神職者の方に向き

「ハラグよ。其方も王都で王妃と王子二人を魔法で治した“ヘルヴェル”という幼女を知っているだろう」


(え?ちょっとそれは、秘密でしょう。お祖父様)


下を向いていたハラグは、ハッとしたようにお祖父様の方を向きました。

「その幼女は、エル「ちょっと待って!ハラグ。その名前を言っては駄目よ」

わたしは、慌てて名前を言うのは阻止しました。

「とにかく、お父さんが教会から帰ってきたらボロボロになっていたのは、事実です」

わたしは、ハラグ一人から神職者全員を見渡しました。

「例え聖職者であろうとも、公爵家に足を向けたのです。

その落とし前はどうしますか?」


「それは 」

ハラグが言葉に詰まっていると

「公爵様に手を出した、枢機卿のメフェストは、教国に逃げようとしていましたが、私達が捕まえ木に縛り付けています。

私達は何もしていませんので見逃してください」


「はあ」

わたしは深く息を吐きました。

「それは、死んだ事務所の社長が、悪いことしていたけれど、私達は噂しか知らないので、事務所名をそのままにして営業していきますと、記者会見で言う役者上がりの役員と同じです」


「「「「 エルーシアちゃん何を言っているの? 全く意味がわからないわ 」」」」


「あ、ごめんなさい。

つまり、組織の上層部が悪いことをしていたのを、知っていたけれど見て見ぬ振りをしていたので、私達には責任はありませんと貴方たちは言っているのよ」


神職者達は黙ってしまいました。


「ベルティンブルグ公爵家は、王都のじぃじの所も含めて、王家よりも、お布施(心遣い)を出しています。その金額は、伯爵家の領地を運営してもお釣りが出るくらいです」

神職者達は下を向いています。

お父様とお祖父様は、何か言おうとしたようですけれど、わたしが一睨みすると、お祖母様とお母様に口を押さえられてしゃべれません。


「それだけ、お金があるはずなのに、癒やしの魔法を領民に与えるのに、多額の金額を要求するし、孤児院には、子供は一人もいません。

ベルティンに孤児が溢れているのに」

お父様達はうんうんと首肯しています。

それに比べ神職者達は、わたしに目も合わせません。

「それに、首には金のネックレスをして、指輪とブレスレットは、高級な宝石をジャラジャラと着けていた、オークおじさんは『銭ゲバに、聖属性魔法の使い手を貸し出さないと言っただけだろう』とお父さんや使用人に言い放ちましたよね?」


わたしがここまで言うとハラグは、頭を地面にこすりつけて

「申し訳ございません。本当に申し訳ございません。私達一同は、枢機卿が着服していたと疑っていたのですが、証拠がつかめなかったため今日まで放置していました」

(ん?今日まで放置していた)


神職者の一人が前に出て、羊皮紙を束ねた物をお父様に渡しました。

「リカード公爵様。これが、メフェストが横領した金額が記入されている裏帳簿です」


お父様は、それを受け取り、お祖父様と二人で見ています。

「こ、これは酷い」

「これは、ここまで私達から巻き上げていたのか!」

「「許せん!教会上層部」」

「エルーシアちゃん。ここは、わしとリカードでこの場を治めていいかな」

お祖父様はそのように言いましたが、


「駄目です」


「「「「えええええええ! どうしてエルーシアちゃん 」」」」


家族四名が悲鳴のように大きな声を出して驚いているようです。


「ベルティンブルグ内の教会は解体します。

そして、王都での献金も中止します」

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