第四四話 憤慨!
第44話
ガチャ
「枢機卿様。お辞めください」
そこに、祭服を着た女性が入って来ました。
「公爵様は、女神フレイヤ様、そして、教会や領民の為に、どの貴族様より、お心遣いをいただいております」
「ふん。だから何だというのだ。フレイヤがあれだけの金額で納得するわけないだろう。もっとこいつから絞り出してやるのだ」
オークおじさんはお父様を蹴り続けます。
「公爵様、申し訳ございませんが、ここは日を改めてください」
祭服を着た女性はそう告げてお父様を面談室から出そうと、オークおじさんとお父さんの間に入り込みました。
ガチャ
「お館様大丈夫ですか?」
そこでやっと護衛の人と使用人が入って来ました。
「こ、こんなになるまで・・・・・・」
護衛の人はお父様を立ち上がらせ、肩を支えています。
お父様の顔からは血がにじみ出ています。
「枢機卿、そして司教よ。
お館様を怪我させたことは、不敬罪だけでは、すまないぞ。
足を洗って待っているのだな」
護衛の人はものすごく睨みをきかせて低い声です。
「ふん。だから何だというのだ!
銭ゲバに、聖属性魔法の使い手を貸し出さないと言っただけだろう」
「枢機卿。逃げられると思うなよ。
例え逃げたとしても地獄の果てまで追いかけてやる」
護衛がそう告げて、お父様達は、面談室からいなくなりました。
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フレイヤ様は、映像を映すのを辞めました。
「フレイヤ様。私、あのオークおっさんを許せない」
私は握り拳をプルプルさせました。
「陽菜。落ち着きなさい。リカードは大丈夫よ。
もし、顔の腫れが引かなかったら貴女が魔法で癒やしてあげなさい」
フレイヤ様の声は、いつもの鈴の音を思わすような声ではなく、とても低い声です。
「でも、私」
「陽菜。貴女の気持ちは、わからないではないわ。
でも、困ったことになったわね」
「何がですか?」
「この病を流行らせたのは、わたしの信徒つまり教会のようね。
王都で流行らせようとしたけれど、エルーシアの活躍でそれを阻止されたので、場所を変えたようね。あのオークデブから呪いを感じたわ」
フレイヤ様は先程と同じくものすごく低い声です。
「教会が、病を流行らせようとしたのですか?
そんな事人為的に出来ないと思います。例え魔法が使えても――」
「そうね。貴女の言う通り普通の人間には無理ね」
「人間には、出来ない。では誰が?」
「この世に恨みが強い怨念・神や巨人・精霊のどれかね」
「そ、それは・・・・・・」
「まあ、言葉をなくすのも当然よね。おそらく私達と同じ神と呼ばれるモノが何かをしているのでしょうね。
邪魔をするのは、いいのだけれど、陽菜、エルーシアに手を出したことが許せないわ」
「陽菜、急に悪いけれど、エルーシアに戻ってもらうわよ」
「はい。でも三日経たないと駄目じゃないのですか?」
「そうね。本来三日間は必要なのだけれど」
フレイヤ様は、視線を上に向けて、瞼をゆっくりと閉じました。
フレイヤ様の目尻から涙が流れてきたかと見ていると
「エルーシア。右手を出して」
わたしは、右手をフレイヤ様に向けました。
フレイヤ様の目尻に集まっていた涙が、ホロッと落ちて私の右手の薬指に――
すると涙は金に変わり指輪の形になりました。
私はポケーッと金の指輪を見ていると
「陽菜。その右手の金のリングを渡して。このリングにスクルドにルーン文字を入れさせるわ」
そう告げてフレイヤ様は私の前から一瞬にして消えました。
私を置いてきぼりにしたフレイヤ様でしたが、すぐに笑顔で戻って来ました。
「陽菜このリングは、右手の薬指につけてね。現状突破の意味があるわ。決して婚約指輪でないから安心してね。
このリングには、スクルドに時間経過のルーン文字を刻印してもらったわ。
これで、三日の時間経過は問題なくなったわ。
エルーシアに戻ってしまうと、このリングは見えなくなるけれども、私はいつも貴女に愛を持って応援するわ」
「フレイヤ様ありがとうございます。
でもフレイヤ様。私が人間界に行っても病と呪いをかけられているので、体に戻っても何も出来ません」
「陽菜。この世では、聖属性魔法は本人にかけることが出来ないと言われていますが、そんな事はないのですよ。
補助魔法の、身体強化は自分自身に魔法をかけるわよね。
この世の聖属性魔法を使える人はいまだかつて自分自身に魔法をかけたことがないのよ。
だから、自分自身にかけても効果がないと勝手に思っているだけなのよ」
「ということは、私自身で回復、治癒、解呪の魔法をかければいいのですね」
「そうよ。でも解呪は、私がするから治癒と回復魔法をお願いね」
「はい。先ずは、自分を治して、その後にお屋敷の人間そして領地に住む人間を治します」
「よろしくお願いね。それと陽菜」
「はい?」
「夢とは言え、日本の母さんの夢をみているのを邪魔してごめんなさい」
フレイヤ様は深々と頭を下げました。
「よしてください。フレイヤ様。私は今エルーシアです。
エルーシアとして、生きていかなければなりません。
確かに母さんは懐かしかったけれど、天国に行ってから母さんと父さんに親孝行をしますから」
「そうね。ありがとう。これからもこの世界を頼むわね」
フレイヤ様は、再び頭を下げました。
今度はいつもの綺麗な笑顔で。
「私は私の好きに生きるだけです。そして、それが大陸を救う事になることになればいいと思っているだけです」
「ふふふ。ありがとう時間の壁を越えるので、ちょっと魂に負担がかかると思うけれど大丈夫かしら」
「はい。大丈夫です」
「じゃ。おまけに魔力をいっぱいにしてあげるわ」
「ありがとうございます。それじゃ、先ずは流行病をやっつけてきますね」
私はフレイヤ様にそう告げてエルーシアの体に戻ったのです。
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