第四三話 父 娘のために動く

第43話




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「エルーシアちゃん。頑張って」

「エルーシアちゃん。昨日はあんなに元気だったのに、急に寝込んでしまって意識がなくなるなんて」

「エルちゃま目を覚まして」


エルーシア(私)のベッドの周りに、お父様、お母様など家族が、そしてメリア等の使用人も揃っています。


(え?なんだか危篤の人を囲んでいるよう)

「そうね。陽菜。それだけ貴女の存在が大きいと言うことでしょう。

みんな居ても立ってもいられないのでしょうね」


「アルーシャ。すまない。

ちょっと席をはずす」

お父様がそう言って部屋を出て、厩舎に向かっているようです。


私とフレイヤ様が見ている映像が、お父様を追いかけています。


「絶対にエルーシアちゃんを治させてみせる」

お父様は、そう言って馬に跨がり何処かに行ってしまいました。


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「陽菜。追うわよ」

フレイヤ様がそう言うと映像がお父様を追いかけます。


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お父様は、ものすごく立派な建物の前に止まり、馬の手綱を着いてきた使用人に渡しました。


「もし私がいつまで経っても戻ってこなかったとき、中に突入してくれ、公爵家の家紋を見せれば問題なく入れるはずだ」


「お館様。教会は、そんなに危険なのですか?」


「最近教会はキナ臭くてナ。アルーシャも最近は教会に来ているが相手は、今から私が会おうとしている人物と異なるからな。私が今日会う人物が臭いの元だよ。だから念のため控えていてくれ」


「はい畏まりました」

使用人は返事をしましたが、

「お館様、私も一緒について行きます」

お父様を護衛している人が一歩前にでました。

「いや、大丈夫だ。私の誠意を見せるためにも、ここは、一人で向かった方が得策だと思う。悪いがここで私の帰りを待ってくれ」

「しかし、お館様」

「すまん。では行ってくる」


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「フレイヤ様は、いつもこうやって私達をみているのですか?」


「一人を注目している場合はこのように詳細にみるけれど、普段は、見ることさえもしていないわ」


「興味あるときに、興味のある人を見るって感じですか?」


「神自身が望む世界があるのだけれど、神でも、人間界にいる人間の心まで操作する事は出来ない訳よね。だから私の望まないことをしている人間がいたら知らせることが出来て、そこから初めて様子をみて、何かの対策を考えるのよ」


「人間で言うと危険察知みたいなスキルを利用して意に反することがあれば監視対象にするということですか?」


「その通りよ。この世界の創造神は、私、フレイヤなのよ。人間界を作るときに、兄のフレイに手伝ってもらい、細かいところは、精霊達にお任せしているの。

だから、この世界は、私を崇める国と精霊を崇める国が存在するのよ」


「精霊を信仰するのが、ガイスト王国で、最もフレイヤ様を信仰しているのが教国ですね?」


「教国。正式にはゲウティン教団国よね」


「初めて教国の本当の国名知りました」


「ゲウティン教団国は、あそこは、宗教家が政治をしている国なのね。

あの国の上層部は私を崇めることなどしていないわ。むしろ……

リカードが、礼拝堂の横にある面談室に、入ったわよ」


フレイヤ様が何か重大なことを言おうとした時、間が悪くお父様が、教会の偉い人と話をする場面になりました。


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「枢機卿。忙しいところ、すまないな」

お父様が神官服をきている、ブヨブヨなおじさんに話しかけています。


「公爵様。よくおいでで。

まあ、汚い所ですが、腰掛けてください」

汚い所と言っていますが、部屋の中は、ものすごくキンキラです。

よく見れば、おじさんは、高そうなネックレスと指輪をしています。


「そうか。じゃ、失礼するよ」

お父様は相手を警戒しつつも、ふわふわのソファーに腰を落としました。


「それで、大変忙しい公爵様がわざわざ、教会に来たのはなぜでしょうかね」

おじさんは、口をへの字にして、お父様を皮肉っているようです。


「我が家の大事な一人娘が高熱を出して、寝込んでしまった」


「ほう。幼くて賢く、金儲けに汚いガキだったかな。

お金儲けの事を考え知恵熱でもだしているのでないのかな」

(私、お金に汚いガキじゃないもん。おじさんの方がオークみたいでお腹がブヨブヨして、顔も汚らしいわ)


「エルーシアは、金に汚くない。困っている人間を助けるためにした行動が、結果的にお金になっただけだ!!」

お父様は握り拳を作り手がプルプルと震えています。

私を馬鹿にされてかなり頭にきているようですけれど、我慢しているようです。


「ふん。あれだけ儲かっているのに、我々に対して(教会)お心遣いが、倍ぐらいにしかなっていない。そして、作物の収入が減って、領民が生活に困っているのに、領主として対策していないではないか」


「そんな事はない。今対策を考え、実行しようとしているところだ」


「庶民の収入を増やさないと、我々にお心付けの金額が増えない。

それは、公爵様が悪いのだ」


うわ~。もらうことばっかり考えているのね。

王都の教会だと、炊き出しなどをして、貧民の命をつなげようとしているけれど、ベルティンブルグの教会は何もしていないじゃない。ブンブン。


「今は、その農業改革や、工業の発展にお金を使うので、すぐに心付けを増やすことも出来ないが、数年すると必ず領民が豊かになり、潤ってくるはず。

どうか、我が家の長女の為に、聖属性魔法の使い手を派遣していただけないだろうか?」


「そんなに、急を要することなのかね」


「頼む、うちの長女を助けてくれ」

お父様は、頭を深く下げました。


「ほぉ。長男でなく女の子で良かったですな。

その娘も、他の子供達と一緒で長生き出来ないのでしょう」

このオークおじさん。お母様は体が弱くて、赤ちゃんを流してしまったことを知って、しかも皮肉っているのね。

(なんだか私激おこ。プンプン)

「もし、その女の子が死んだとして、また頑張って子供を産めばいい。

奥方は身重と情報が入っていますよ。

ふあはははっは~」


「そ、そんな事を言わずどうか魔法使いを派遣してくれないか?」

お父様はすがります。


「知るか! 我々の収入源の孤児院も当主様が、運営するのだろう。

この銭ゲバが!」

ドン

そう言ってオークおじさんは、お父様を蹴り落としました。

「そこをなんとか」

ドン ドン

「お願いだ。聖属性魔法の使い手を  」

ドンドンドン

お父様は、無抵抗でオークおじさんに蹴飛ばされています。


次回へ続く

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