第三八話 なぜか、お父様がドヤ顔
第38話
ビカビカ
キーラン☆
フレイヤ様が、お帰りになってから、わたしはプルプル、ポヨポヨをはじめスライムちゃん達をテイムしています。
その結果、プルプルとポヨポヨは、ぴょんぴょんと飛び跳ねて、かまって欲しいとアピールしています。
(ふぅ。元の可愛い二人に戻って良かった)
そして他のスライムちゃん達は、わたしを涙目で見ているような感じがします。
なぜでしょう?
(お屋敷のスライムちゃん達のテイムは、終わったわ。
あとは、シュタインの工房に行ってテイムしないとね)
わたしは、お庭からお父様の執務室に行きました。
コンコンコン
「お父さん入るよ」
「エルーシアちゃんかな?どうぞお入りなさい」
扉が勝手に開いたので、わたしはお父様に飛びつこうとしましたが、執務室にある人がいたためモルモットのように固まってしまいました。
「やあ。エルーシアちゃんお久しぶりだね。
再び慣れてくれるまで、一週間くらいかかるのかな?」
そこにいたのは、今年王都の学校を卒業して、お城で働くギャロン叔父さんでした。
その姿は、お父様をそのまま、若くした出で立ちです。
わたしは、ハッと意識を取り戻しました。
「お、叔父様。お久しぶりです」
わたしは、スカートを摘まみ軽く腰を低くしました。
そして、トトトっと走ってお父様の影に隠れて
「ギャロン叔父さんは、いっぱい遊んでくれたので大丈夫ですが、
お隣の、綺麗なお姉ちゃんは誰?」
「ふふふ。この女性は、僕の婚約者だよ。
結婚やその他のことで、兄さん夫妻に相談に来たんだ」
「あ、それは、おめでとうございます」
わたしは、叔父様の婚約者様の方に体を向けて
「わたしは、エルーシアです。
父のリカードと母のアルーシャの長女です。
今後よろしくお願いします」
わたしはカーテシーをしました。
「あら、ご丁寧にありがとう。
あなたが噂のエルーシアちゃんね。
わたしは、ギャロンの婚約者のヘルマと申します。
今後ともよろしくね」
ヘルマさんは、流れるような所作で、挨拶をしてくれました。
彼女は高級貴族のお嬢様と思われます。
「エルーシアちゃんは、人見知りが発動しても挨拶はきちんとできるのだな。
えらいぞ」
「そうだろギャロン。エルーシアちゃんは、ものすごく偉い子なのだよ」
そうお父様に褒められていますが、わたしはすでにお父様の影に隠れています。
「ところで、エルーシアちゃん。何か用事があったのだろう?」
「はい。お父さん。実は、シュタインの工房に預けているスライムちゃん達をテイムするために、工房に行きたいので、馬車を出して欲しいの」
「そうか。うーむ」
「お父さん何かあったの?」
「実は、クラーラが体調不良で休ませているから、エルーシアちゃんの侍女がいないのだよ」
「お母さんは、教会に行っているし。
あっそうだ、グイダにお願いしたら」
「ふむ。グイダもどうやら風邪のようで、休みなさいと命令したのだ。
わたしも今日はここ(執務室)から出られないほど仕事が貯まってしまっている。
どうしようか」
少し沈黙があり、それを破るように
「じゃ、兄さん僕がエルーシアちゃんについてシュタインの所に行ってくるよ」
「ギャロン様それは、いいお考えですわ。私もエルーシアちゃんと一緒に馬車に乗って仲良くなるきっかけにいたしますわ」
ヘルマ様はパァっとお花が咲いたような笑顔です。
(え。初見はちょっと無理だわ)
そんな事を思っていても、ヘルマさんは、わたしの手をとり執務室を出ました。
そして、四から五歩歩いたところで、
「エルーシアちゃん。わたし、お手洗いに行きたくなったの。
連れて行ってくれる?」
ヘルマさんは、顔が真っ赤になっています。
「うん、わかったよ。ヘルマさん。
わたしが、お手洗いに連れて行ってあげるね」
わたしは、このお屋敷以外の人の水洗トイレの使った感想が聞くことが出来ると思い、人見知りが飛んで行ってしまいました。
「うん。じゃあお願いね」
「お姉ちゃん。ここが我が家の最新おトイレだよ」
「あら?エルーシアちゃん。私をお姉ちゃんと呼んでくれるのね」
そんな、和やかな会話を二人はしていますが、ヘルマ様の侍女が、緊張しています。そうでしょうね。余所のおトイレを使うのは、使用人達は気を遣うでしょうね。
そんな、ヘルマさんの使用人をあざ笑うかのように
「お姉ちゃん。このおトイレに使用人は必要ないのよ。
完全プライベート空間なの」
「え?エルーシアちゃん。どういうことかしら?」
わたしは、水洗トイレの扉を開きました。
「あれ? おまるが無いわ。」
「ふふふ。今から説明しますね」
キャーキャー騒ぐ使用人達を後ろに、使い方を説明しました。
数分後
ガチャ
「感動した。幼さに負けずよく作った!」
ヘルマ様は、自分の政党をぶっ壊す!と言ってとても偉くなったX JAPANを愛する政治家のような台詞を言ったあと、わたしの手を取り
「すごい、すごい、すごいわ。この水洗トイレ。これで天下を獲れるわよ。
エルーシアちゃんが作ったのよね。きっとエルーシアちゃんは天下を獲るわ」
ヘルマさんは、よっぽど水洗トイレが良かったのでしょう。わたしの手を握りながらぴょんぴょんと跳びはねています。
(スライムか!)と心の中で突っ込みを入れると
「どうしたんだい。そんなに飛び跳ねて。ヘルマ、ようが終わったなら、馬車で移動するよ」
使用人達を避けながらギャロン叔父さんが、こちらにやって来ました。
「ギャロン様。この水洗トイレというものは、すごいわ。
貴女様の姪っ子ちゃんは、王都で評判のヒーナ商会をたちあげた才女とは聞いていましたが、本当に怪童ですわ。こんな近くに天才がいたなんてさすが公爵家の教育は素晴らしいわ。
わたしは、卒業を前に、ベルティンブルグ家にお世話になるわ。
そして、エルーシアちゃんの力になるの。
だから、王都のお屋敷にこのトイレをすぐにとりいれて」
「ヘルマ。何をそんなに興奮しているのだ。
君らしくないな」
「それは、この水洗トイレという場所と使い方が画期的なのよ。
ギャロン様も一度使うとこの良さがわかるわ」
ヘルマ様が、ギャロン叔父様の背中を押して水洗トイレに入ろうとしたとき
「ヘルマお姉ちゃんちょっと待って。男の専用の便器もあるから隣のドアを開けて」
「「ええ。なんじゃこれは!」」
「何をそんなに騒いでいるのだ? お二人さん」
お父様が騒ぎを聞きつけて、トイレにやって来たのでしょう。
でも何故か自分が作ったぞ、みたいな雰囲気をだしてドヤ顔です。
「お父さんいいところに来ました。
ギャロン叔父さんに、男子用と共用のトイレ両方の説明をしてください」
わたしは、ギャロン叔父様をお父様に預けて、ヘルマ様と会話を続けます。
「エルーシアちゃん。男性用とかもあるの?」
「そうです。男性は立ったままで用を出来るような便器をつくりました」
なぜかヘルマ様は顔を真っ赤にしています。
「それはともかく、これからプルプルとポヨポヨのお家へ行って二人を馬車に乗せますね」
「エルーシアちゃんプルプルとポヨポヨって誰?」
「わたしがテイムしたスライムちゃんです」
「テイムしたスライムを連れて行くのかしら?」
「そうなのです。スライムちゃん達がおトイレを綺麗にしてくれているのです。
王都でも水洗トイレを普及したいので、テイマーを探しているのです。
ヘルマお姉ちゃん誰か知り合いいませんか?」
「ねぇ。エルーシアちゃん。もしテイマーを紹介して、その人が採用されたら王都で、水洗トイレを作るのが早くなるかしら?」
「その方が有能であれば、可能ですね。
テイマーの有能な人は、冒険者になってしまいますから」
「それならば、私の家で、大きな怪我をして冒険者を廃業したテイマーがいるわ」
ヘルマ様の瞳はものすごくキラキラとしていました。
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