第三六話 神でも嫉妬するらしい
第36話
「ぅん、んん。むむむ」
わたしは、お外がとても寒いためか、咳払いをしてしまいました。
どのくらい寒いかというと、枯れ葉を集めて、焼き芋をするのにちょうどいい温度です。
でも枯れ葉を集めて火をつけても、果たして焼き芋は出来るのでしょうか?
陽菜だったときも焼いたことがないので、ちょっと気になってしまいました。
気を取り直して再び、分裂したスライムちゃん達が、働く浄化槽を見ています。
スライムちゃん達は、わたしに向かってぴょんぴょんと跳びはねて、仕事をしているよ、アピールをしています。
(スライムちゃんの人数は増えたけれど、プルプルとポヨポヨと最初に分裂した3人と、ここの12人の仕事量が同じだわ)
浄化槽のお仕事をするようになってから、スライムちゃん達は次々に分裂して
「すっごーい。スライムちゃん達」
なんて、言っていたのですが、ちゃんと考えると増えれば増えるほど効率が悪くなっているのでは? と考えて確かめに、浄化槽に来たのです。
(間違いないわね)
わたしは、視線を落としたまま、プルプルとポヨポヨのお家に行きました。
以前なら、家の前にいてわたしを出迎えてくれたのに、今日は全く遊んでアピールがありません。
そして何よりも、プルプルとポヨポヨのつながりが薄くなったというか絆の糸が細くなった感覚があります。
(え、なぜ、どうして、スライムちゃん達わたしを嫌いになったの)
考えれば考えるほどネガティブ思考におちてしまいます。
いつもなら、考えるより先に、チーンとアイデアがでてくるのに、今日は全くだめです。
(ああ。フレイヤ様ならなにかわかるかしら?)
思考がそこに辿りついたとき辺りに変化がありました。
ピカー
辺り一面が金色に輝きはじめ
「ふふふ、陽菜。いいえ、エルーシア。お久しぶり。
みんなのアイドル『フレイヤ』よ」
「フ、フレイヤ様」
わたしは、頭を下げました。
「ご無沙汰してごめんなさいね。
ちょっと旦那が何処かに旅に出て、全然帰らないから全世界を探していたら5年経っちゃったわ。でもちゃんとエルーシアを見ていたのよ。信じてね!」
コツンと頭を叩き、某お母さんの味がする飴のキャラクターのように舌を出しています。
(女神様にも旦那さんとかいるのか。神様も人間みたいね)
わたしは女神様のアクションをスルーして
「それで、フレイヤ様、ご主人は見つかったのですか?」
愛と豊穣の女神は、視線を下に落とし左右に頭を振りました。
「それが、まだ見つからないのよ。本当にあの放浪神どこに行ったのかしらね」
「フレイヤ様、わたしに話を振られてもわかりません。
フレイヤ様は、容姿端麗で素敵な女性ですから、他の男の人と話していたところを見られたりして、嫉妬で拗ねて旅に出たのではないですか?」
「あら。そう言えば、ロギとお茶をしていたところを見られたわ。
でもエルーシアちゃん、本当にお茶して今後の神の世界について語り合っていただけなの。信じて」
(うわ~。ちょっと必死すぎ。こんな時ってやましいことがあるときよね)
「わたしにそんな事を言っても、駄目です。ちゃんと旦那さんを見つけて、フレイヤ様の大好きな旦那様にちゃんと説明してあげてください」
「そう。そうね。エルーシアちゃんの言う通りね。
じゃ。早速探しに行くわ」
そうして消えようとするフレイヤ様の腕を掴み
「フレイヤ様、わたしが困ったから来てくれたのですよね。
ちゃんと職務を遂行してからプライベートなことをしてください。
仕事大事です」
「おっほん。わかったわ、エルーシア」
フレイヤ様はちょっと顔を紅くしています。
「今回私を呼んだのは、スライムは分裂すると、その能力とテイム者にたいしての絆が弱くなっているようだということね」
「はい。あんなに懐いていた、プルプルとポヨポヨがわたしに無関心なのです。そして、3人で簡単にできていたことが、12人でやっと同じごとが出来るようになっている現状に悩んでいます」
フレイヤ様はウンウンと頭を上下に動かしています。
「分裂する前のプルプルとポヨポヨの状態に戻したい。
それと分裂しても、分裂する前の状態にする事が出来るか教えて欲しいです」
「エルーシア。その答えは」
フレイヤ様はわたしの目をじっと見つめます。
「その答えは」
わたしもフレイヤ様の目をじっと見つめます。
そして、見つめ合うこと30秒。
「テイムをもう一度する事ね」
「え?もう一度」
わたしは、フレイヤ様を見つめながら呼吸さえも止めてしまいました。
「あら、エルーシア動きが固まったけれど大丈夫?」
わたしは、ピクッと体が勝手に動いて、思考を取り戻しました。
「まさか、テイムをかけ直すことが出来ると想像もしていませんでした。
それに、人間に対しても精神干渉ができそうで、ちょっと怖いです」
「そうね。エルーシアは、精神干渉系の魔法や能力〈スキル〉もできるわね。
例えば、“魔眼”とかね」
「ま、魔眼がわたしにも使う事が出来るのですか?」
「そうよ。エルーシアは、万人から愛される私の加護があるから、魔眼がなくても、みんなに愛されるけれどね」
「え!すごいですね。魔眼がなくても、わたしをみんなに愛されるキャラに出来るフレイヤ様。さすがですね」
「そう。私はすごいのよ。エルーシア」
「ところで、フレイヤ様」
「なに? エルーシア」
「魔眼って何ですか?」
ズッコー
フレイヤ様は、盛大にコケました。
綺麗なお顔が台無しです。
そして、魔眼がわからないわたしは質問を続けます。
「フレイヤ様わかりました。
鴨の事ですよね」
「それは、真雁!」
「鉱石?」
「それは、マンガン!」
「ズパババババって発射する奴?」
「それは、マシンガン!」
「やっとわかった。ウニみたいな木の実で、甘味に使ったり、茶碗蒸しの具材?」
「それは、マロン 栗よ!
いい加減にしなさい!」
「「ありがとうございました~」」 「ケホッ」
そして何故か、この後も、わたしがボケて、フレイヤ様がツッコミをするとう漫才ごっこを3ネタくらいこなし、魔眼の意味を教えてもらいました。
(咳が出てきたな、最近寒いから風邪かな?)
___________________________________
【作者からのお願い】
ここまでお読みいただいてありがとうございます。
I.ランドよりお願いがあります。
この先の展開が気になりましたら、☆を★に変えて一度評価していただくと励みになります。
あと、サツマイモを枯れ葉で、焼いて焼き芋で食べた方。
コメント欄に、焼いた時期と焼くのにかかった時間など、教えてください。
よろしくお願いします。
それでは、明日の投稿までお待ちください。
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