第三五話 エア計画(教育制度)
第35話
「グイダ。お茶の用意よ。
エルーシアちゃんと、リカードと私で打ち合わせをするわ」
「ぅん、ぅん」
グイダは、咳払いをして
「は~い。畏まりました。奥様~」
お母さんが声をかけた使用人のグイダは、わたしが、人見知りを発動しない数少ないメイドです。
若手の中で一番の出世頭で、現在は、ウェイティング・メイドに昇格しているほどの出来るメイドです。
わたし達は、お父様の執務室では無く、面談室に入りソファーに腰を下ろしました。
「さて、エルーシアちゃん。
アルーシャが、教育関係の責任者になるのだな」
「そうです。
聖母のように優しく。貴族夫人の見本のようなお母さんが適任です」
「あら。まあ」
お母様は顔が真っ赤になっていますが、まんざらでもないようです。
「人々に寛大な心でいるお母さんが適任です」
「そ、そうか? 痛った」
お母様がお父様の手をつねりました。
イチャイチャしている二人を無視して
「目標は、ベルティンブルグ領は、『フーマ王国内で一番豊かな領地』にすることです。
領主家の政策により、実施されたことが領民の生活水準をあげることが、一番大切で重要なことだと思うの」
「それがぁ。教育に力をいれるのに、どこに繋がるのかしらぁ?」
「領民達の教育水準を上げると、ベルティンブルグ領が強くなるの」
「領地が強くなる?エルーシアちゃん全く意味がわからないぞ」
「お父さん。今、ベルティンブルグ領は弱くなっているわよね。軍事的ではなく。それはどうしてかな?」
「 それは、税収が少なくなっているからだな」
お父様は、少し考えてから答えました。
「そう。ベルティンブルグ領の一番の収入源の小麦と野菜の収穫量が減って税収が減ったから弱くなったと言うのですね」
「その通りだよ」
「では、税収を増やすためには、何をするの?」
「農産物の収穫量を増やすために、開墾して畑を増やす」
お父様は、パッと目を見開いて答えましたが、それは、悪手です。
「確かにそれもいいと思いますが、今の領民の人口でそれをやっても畑のメンテナンスが出来なくなって荒れ地ばかりになると思うわ」
お父様は、目を伏せてしまいました。
「それよりも、今の耕作地の広さのままで、収穫量を増やすことを考えた方が良策だと思うの。
今の不作の原因は、同じ場所で小麦をずっと植えていることだと思うの。
でも、それってお父さんやお母さんだけじゃ、この考えが出てこないでしょう?」
「「そうだね」」
「でも、エルーシアちゃんは、どうしてそんな考えをもったのかしらぁ?」
「クラーラと市場に行ったときに、商人や農家の人から聞いて辿りついたの」
(本当は、陽菜の知識の中で連作は駄目だと知っていたの)
「「ほう。やっぱりエルーシアちゃんはすごい!」」
「そんな事無いよ。わたしは、フレイヤ様からヒントをもらったから。
お父さんも、お母さんも、わたしより頭が良くて色々な知識や知恵がいっぱいあると思うの。
でも、それらを詰め込むだけで、知識や知恵を生かす考え方ができていないだけなの。常識を疑うことをしていないの。」
「どういうに考えれば良いのだ?」
「それはね」
「「それは」」
二人はぐぐっとわたしに顔を寄せてきました。
「面倒だから教えな~い」
ズッコー
ズッコー
二人はずっこけてしまいました。
「きっと、同じ場所で同じ食物を育てると駄目だと気づいている農家もいると思うの。
その考えをみんなで共有していい考えを領民が出来るようにするために、教育制度は必要と思うのよ。
読み書き、算術が出来るという事は、考えることに対しての武器なの。
今よりも、明るい明日にするために必要なの」
「うーむ。
エルーシアちゃんの言うことは、一理あると思うのだが、
領民が、与えた知識で反旗を翻すことがないかな?」
わたしは「ぅん、ぅん」と咳払いした後
「善政していたら、そんなことは、起きないよ。
自分たちの生活が少しずつ楽になっていくのに、領主が悪いとはならないわ」
「そうかな?」
「ベルティンブルグに住んでいる人よりも、領地外に住んでいる人間に気をつけないと駄目だと思うな」
「政敵の貴族や、影の集団とかかな?」
「そうです。自分が貧しいのは、豊かな生活をしている人のせいだ。とか、なければある所から奪えばいいと考えているところ」
「よし。わかったよ。エルーシアちゃん。
先ずはエルーシアちゃんの考えていることを説明してもらおう」
わたしは、捨てられても生活が出来るように、孤児院の改革を話しました。
それは、路上生活をする子供達全てを、施設に入所させること。
衣食住をベルティンブルグ領で面倒をみる。
仕事を斡旋して、お昼前は仕事をして、お昼ご飯を施設で食べ、その後は勉強をしてもらう。
孤児院で働く人は、信頼できるお祖母様のお友達のご主人に責任者になってもらい、子供達の面倒を見るのは、シングルマザーの方達などを採用して公務員という立場にすること。
そして、
10歳~12歳に読み書き、算術を教えて、魔法適性をしらべる小等学校
13歳から15歳までは、体力のある者は騎士など軍務科、農家の跡取りは農業科。錬金術科、芸術科、商い科、公務・政務科、魔法科など適正のある事を学ぶ高等学校。
そして授業料は卒業後に領地で働くことを条件に授業料は無料。在学中、小等学校で優秀な成績を上げたものには、本人が望めば無料で王都の学校へ通うことが出来る特典をつけました。
もちろん卒業後は、ベルティンブルグ領で上級公務員として働いていただきます。
今回のお話しで、このような事が決まりました。
わたしは、そのベルティンブルグ小等学校の初代の生徒として五年後入学するのです。
(あああああっ しまった~!)
わたしは、説明後気づいてしまいました。
人見知りなのに、多くの子供達と一緒にやって行けるのでしょうか?
わたしは、「ぅん、ぅん」と咳払いをして、頭を抱えたのでした。
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