第三四話 スライムちゃん達の能力(ちから)

第34話



作者からのお願い

お食事中の方は、お食事が終わってから読んでください。


*********************************


昼食が終わりました。

シュタインのお弟子さん達が、後片付けを積極的にしてくれました。


さて、わたしは、ふくれ面のお母様とそれを影で笑うお父様とシュタインの四人で工房に行きました。


「お父さん、お母さん。教育改革に使う資金を稼ぐ魔導具をお見せしますね」


わたしは、本当に出来ているかわからないのに、堂々と言い切りました。

シュタインを見ても、様子におかしなところがないので大丈夫でしょう。


シュタインは、工房の角にある白い布を剥がしました。


そこにはまさしく、水洗用の便座が、「僕は、ここにいるよ!」と主張しているくらいに鎮座しています。

魔石が組み込まれるところを除くと本当に、水洗トイレそのままです。

そして、その横には、スライムちゃん達が、食事するところというか、お仕事するところの浄化槽が置いてあります。


「こ、これがエルーシアちゃんの行っていた水洗トイレなのだな」


「坊ちゃん。どうだ。すごいだろう。

嬢ちゃんに言われたまま再現したぞ)


でましたー! シュタインのドヤ顔


確かにわたしと打ち合わせしたのを再現しています。


そこで、お母様がニヤニヤして、お父様を肘打ちしています。

「ふふふ。『坊ちゃん』ですって。

そんな、子供はどこにいるのかしら?」


お母様は、キョロキョロ探す演技をしたあと、「ぐふふふ。あはははは」と地面を手で叩き、大爆笑しています。

(お、お母様笑いすぎ。お父様の顔が引きつっているわよ)


「シュタイン。だから辞めてくれって言ったではないか」


「そ、そんな事言っていましたかね」

(あら、シュタインも肩をヒクヒクしているわね)


「まぁ。若奥様もそれぐらいにしておくれ。

では、お嬢から説明してもらう」


「お父さん、お母さん。

これから水洗トイレの説明をしますね」


「「よろしくお願いね。エルーシアちゃん」」


「ここにあるのは、水洗トイレというものです。

便座に座って、ようをたして、

このレバーを引くと水がドバーッと流れてきます。

お尻を拭くのは今までと同じく、葉っぱに綿クズや、他の生地の端を使って、そのまま、便座の中に捨ててしまいます。

今後、トイレットペーパーというものを作ってヒーナ商会で販売します。

トイレットペーパーは、お金のある人間が使うようになるでしょう。

でも、この水洗トイレが普及したら、次はお尻を拭くこともない便座を作って販売します」


「おまるに用をして、使用人に持っていかれるより、よっぽど気が楽になるわねぇ」


「でも、エルーシアちゃん。流した汚物の処理はどうするのだ」


わたしは、浄化槽を指さして

「この装置、浄化槽を家の外に設置します」


「それで」


「便座から、排水管で浄化槽までつなげます。

浄化槽の中と排水管をスライムちゃん達が通れるようにします。

そして、汚物をスライムちゃん達に食べてもらい、スライちゃん達の排泄物を、排水管を通して、流して下水道に、そして最終的に川に流します」


「下水道? 最終的には川に流すのか?」


「この間、シュタインと実験したの。

スライムちゃん達の排泄物は、人間と違って、無臭なの。しかも透明でまるで綺麗な飲み水みたいなの」


「ほう。色も透明で、臭いがしないのは大きいな」


「そうでしょう。お父さん。実は、プルプルとポヨポヨのお家も全く異臭がしないの」


「ほう。スライムちゃん達のお家が嫌な臭いがしないのは、気づかなかった。

異臭といえば、確かに人口が密集しているところは、ものすごい臭いよな。

そうか。それで、この間エルーシアちゃんがトイレの臭いが嫌ではないか聞いていたのだね」


「そうです。お父さん。

けれど、これから課題と問題もあるの」


「課題と問題?」


「課題は、プルプル、ポヨポヨが覚えてくれるかどうか」


「まあ。それは大丈夫じゃないか。このスライムちゃん達がエルーシアちゃんの言うことを理解して動いているようだ。

テイムしたエルーシアちゃんの魔法がすごいのかも知れん」


「問題は」


「どんな問題があるのだ」


「う○ちを食べたプルプルとポヨポヨを直接触れなくなったの。

臭いもしないし綺麗とおもうけれど、水でワシワシ洗わないと無理なの

水洗いしないと駄目なの

でも、水でワシワシと洗われている二人はぴょんぴょん跳ねて嬉しそうなの

わたしは、悲しいのに」


「そう・・・・・・ そうか。

でも、スライムちゃん達にいっぱい分裂してもらって、分裂した子をトイレ当番にして、プルプルとポヨポヨは、スライム王としてスライム達に指示だけするような立場にすればいいよ。 きっとそうすれば、万事解決だ」


「そうか!お父さんさすがね。昔の中小企業の社長さんのように、昼はゴルフ、夜は酒場に出勤したように現場から卒業させればいいのね」


「ん? 中小企業? ゴルフ?

ほらやり方は色々あるだろう。

だから、私達にももっと相談するべきだ。

シュタインより役に立つぞ。お父さんとお母さんは」


「うん。けれど、道具はつくれないよね」


お父さんお母さんは、顔を見合わせました。そして、

「「はい。ごめんね。口先だけで」」


お父さんとお母さんは頭を下げました。


「あ、お母さんは、何も言っていないけれど、何かある?」


お母様は便座に腰掛けました。


「え エルーシアちゃん」


「ど、どうしたのお母さん」


「この便座、座り心地が抜群で、スカートをはいたまま、ようをすますことができるわ。

これは、天才的発明ね」

お母様は、じっととお父様を睨み

「「男の人は立ったままの行為を禁じます」」

お母様とわたしの声が合わさりました。


お父様とシュタインが肩を落としてシュンとしています。

そう言えば、男子しか使わない便器があったな。

「お父さん、シュタイン安心して。

男の人用の便器を今、思いついたわ。後でシュタインと打ち合わせね」


「おう。わかったぞ嬢ちゃん」


「後は調整のために、ここ(シュタインの工房)に1セットと浄化槽一つ。

お屋敷で、共用の物が三セット。男子用二セット。少し大きくした浄化槽を一つ。

取り付けて」


「おう。了解だ。期限は10日後でいいか?」


「そうね。もっと早いほうがいいけれど、それでいいわ。

プルプルとポヨポヨと分裂した子のトレーニングをして、それが終わったらここに連れてくるわ」


「嬢ちゃんわかったぞ」


「微調整が終わったら、領地内に設置していくわね。

いいかなお父さん」


「いいよ!」

お父様はサムズアップして許可してくれました。



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