第十一話 金貨十枚ってどんな価値?

第11話 



「お嬢様~。起きていらっしゃいますか~」

語尾を伸ばす独特のしゃべり方のメイドが、寝室に迎えに来ました。

「おはよう」


「起きていたのですね~。お嬢様~。市場に行かれるので、いつもよりも早い起床でしたが、心配ありませんでしたね~」


わたしは、メイドの手伝いで服装を変え、そのまま、馬車へ向かいます。

そこには、御者のワグナー、クラーラとメリア。

そして何故か、オドベード叔父様とコーエンもいて馬車に乗りました。

プルプルは、お留守番です。

市場へ向かう馬車の中では、コーエンがわたしに絡んでこようとしていますが、話しかけられたらメリアと会話し、触ってこようとしたら魔法で静電気をつくり、ビリビリさせて、近寄らないようにして、ことごとくスルーして今はクラーラの後ろに隠れています。


メリアはそれを見て、お腹を抱えて大爆笑をしています。

(失礼しちゃう!)


クラーラ夫妻とオドベード叔父様の大人は、三人ともわたしとコーエンを見て苦笑いをしています。


「オドベード叔父様、わたしは遊びに行くのではないのです。

それなのに子供を連れてくるとはどういうお考えですか?」

周りに笑われているわたしは、頭にきて、思わず叔父様に八つ当たりをしました。


「あははは。エルーシアちゃんそれは、キツいな。確かにコーエンを連れてきたけれど、悪気はないのだ。

それにエルーシアちゃんもメリアも子供だろ?」


「叔父様、私は、確かに5歳の子供ですけれど、話をすり換えないでください。

何故、二人は一緒に着いてきたのですか?と聞いているのです」


私は自分が子供だという事を忘れて、素で話してしまいました。

昨日の一件でもう隠しても仕方が無いと諦めてしまったのです。


「・・・・・・ 同じ5歳なのに男の子と女の子はこんなに成長が違うのだな。

エルーシアちゃんは特別としても、メリアもしっかりしているよな」

と叔父様は小さい声で言いました。


わたしの問いに答えてくれない叔父様に、ちょっとカチンときて

「叔父様、私の質問に答えてくれないので、今からわたしに話しかけないでください」

わたしは、オドベード叔父様もコーエンも無視することに決めました。


「△ □ ◇ ○ 」

「・・・・  ・・・・・・・ 」


叔父様は何か言っているようですが、わたしには彼の言葉は聞こえませんし、見えません。



踏みつけられて硬くなったと思われる道路。

その左右には商品を並べている場所につきました。

荷馬車を使ってお店に商品を積んで移動する人。

走って移動している人。

ゆっくりと商品を眺めている人。

沢山の人がいてとても活気がある場所につきました。

そうです。市場に着きました。


「へぇ。クラーラここが、王都の市場なの?」


「さようにございます。

ここが王都の市場でございます。

でも、私が知っている市場はもっと人が多く、もっと活気があるのですが、今日は人が少ないようですね。

しかし、ここはフーマ王国随一の市場ですので、どんな物でも揃えることが出来ますよ」


「ベルティンと比べても、王都の市場の方が大きいの?」


「さすが、エルーシアお嬢様。

確かに広さはベルティンの方が広いですが、商品の数や売上高。つまり市場の規模はここの方がダントツで大きいです。

その理由ですが、ベルティンでは、お貴族様は、ベルティンブルグ家一族しかおられません。

しかし王都では、バルデマーお館様のように、王都で暮らすお貴族様が多いので、商人は高額な物は、王都の市場に持ってくる者が多いのです。

しかも、庶民も圧倒的に王都の方が多いですから。

王都の市場の方が大きいと言えるのでないでしょうか?」


「そうなのね。

わたしの我が儘で、ワグナーとクラーラそしてメリアを、ベルティンブルグに連れて行ってしまったのね。きっと王都の方が住みやすいのでしょう?」


「メリア お嬢様と一緒 嬉しい」

メリアはわたしをガシッとハグしました。


「そうですよ。エルーシア様。

私達家族はエルーシア様と一緒に居られてとても幸せです」


クラーラ一家と絆を再構築した後

わたしとクラーラとメリアで数店のお店をまわって香りの良い香草(ハーブ)を購入しました。


その後、市場の近くの屋台で朝食を食べたあと、冒険者ギルドへ行きました。

場所は、昨日の受付の会った場所の別の棟です。

魔物の解体場所です。

お肉になったオークをクラーラにアイテムバックに入れてもらいました。

今回のオークやその他の魔物は、とてもお肉も毛皮も状態が良く、金貨10枚です。

わたしはその金貨を冒険者ギルドに預けました。

副ギルド長のマヤさんは、手を振って帰るわたし達を見送ってくれました。

その後真っ直ぐ、お祖父様の家に帰えりました。

もちろん、オドベードの叔父様とコーエンをいまだに無視しています。


「ハウシュビッツ家の男どもは、女を怒らせると怖いって知れば良いのよ!」とプルプルに愚痴りました。

プルプルは、ブルブルしていました。



**************

※語尾を伸ばすメイドは、王都からの移動してきた者です。

エルーシアが、人見知りを発動しない極めて稀な使用人の一人です。

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