第九話 男の孫にはしょっぱいが、女の孫には甘いじぃじ

第9話 


「おお!エルーシアちゃん。少し会わないうちに大きくなったな。

じぃじだぞ。覚えているか?」

お祖父様は、目尻を下げてデレデレしてわたしに近づいて来ました。


「はい、お祖父様、お久しぶりです。もちろん覚えています。お祖母様のご様子はいかがでしょうか?」


わたしは、軽くカーテシーをして、お祖父様にご挨拶をしましたが、お祖父様はちょっと眉を寄せて不機嫌になりました。


「エルーシアちゃん、私はお祖父様じゃなく、『じぃじ』だぞ。そしてお祖母様じゃなくて、『ばぁば』じゃぞ」


お祖父様は、自分をお祖父様と呼ぶわたしが気に入らなかったようです。

だって先程、従弟のコーエンがちゃんと挨拶できなくて、お祖父様が激怒したって聞いていたし・・・・・・


わたしはもう一度スカートの端を掴み

「じぃじ。元気だった? ばぁばは大丈夫かな?」

ちょっと照れた態度を入れて上目遣いの甘甘モードでもう一度挨拶をしました。


「おお エルーシアちゃん、わしは元気じゃぞ。でもな・・・ ばぁばは・・・」


お祖父様は目を伏せました。


そんなお祖父様を見てわたしは、

「じぃじ。ばぁばに会わせて」



お祖父様は首肯して、私たちをばぁばの部屋に案内してくれました。


コンコンコン


お父様が、ノックをしてわたしとお父様ともう一人、お部屋に入りました。


お祖母様の部屋はお香を焚いていてとても匂いがきつくなっていました。

まず、わたしは窓を開けて空気の入れ換えをします。


そうして

「ばぁば、お久しぶりです。エルーシアです」

とお祖母様に声をかけました。


お祖母様は、もう体力が無いのか、わたしを見るとニコっとしましたが、体を起こす気力も無いようです。


ゴボゴホゴボと咳をして、ふらふらとしながら、腕を出し、頭を撫でてくれました。


お祖父様は

「今、王都ではジョリーナと同じ病が流行しているのじぁ。

わしも最初は、風邪かとおもっていたのだが、日々悪くなる一方なのじゃ」


わたしはお祖母様のおでこに手を当ててみました。

おでこはとても熱くなっています。


(これは、生前の世界で言うインフルエンザかしら・・・。インフルエンザの特効薬って、ウィルスの増殖を止める薬だったはず・・・)


「じぃじ。ばぁばの横にきて」

わたしは、きっとお祖父様も感染していると思い、お祖母様と一緒に治療しようと思い近くに来てもらいました。

《お祖母様とお祖父様の中に入ったウィルスをやっつけてください》と

願いをして「えい!」と魔法をかけました。


お祖母様とお祖父様の周りにキラキラと金色に輝くお星様が舞いました。


お祖母様は少し顔色がよくなりました。


今度は、お祖母様だけに《肺、喉、等の内臓の炎症を治して》

再び私は治癒魔法をかけました。

キラキラ光るお祖母様をみて、お祖父様は驚いたようで、口を大きく開けています。


続けてわたしは《お祖母様とお祖父様の体力が元に戻って》と願い回復の魔法を展開しました。


今度はピカーとわたしが光り2人に回復魔法がかかりました。


お祖母様はキョロキョロして体を起こしました。


お祖父様は自分の体が楽になったのと、お祖母様が体を起こしたことにビックリしてさっきよりも大きく口を開けて固まってしまいました。

(お祖父様の顎、外れないよね?)


「エルーシアちゃん? 貴女が私を治してくれたの?」

お祖母様は、上半身を起こしました。


私はニコニコ顔をして

「うん。そうだよ。初めてやったけど上手くいって良かった!」

と応えました。


「え エルーシアちゃんは、聖女?そして無詠唱・・・」


お祖父様の発言に ピクッとお父様が反応しました。


「父上、母上、申し訳ございませんが、エルーシアちゃんが聖属性魔法を使えることは秘密にして頂けるでしょうか?

この力が教会にばれると、問題が起きます。

私とアルーシャは、エルーシアと生活を続けていきたいと夫婦で思っています。どうか協力をお願いします」


お父様は、お二人に深く頭を下げてお願いをしました。


「じぃじ、ばぁば お願い内緒にしてね」

とわたしからもお願いしました。


無詠唱で聖属性魔法を使うわたしに、戸惑っていた二人は、顔を見合わせて笑顔を作りました。

「「当然じゃ、この世界一可愛い孫娘を教会に売り渡すようなことは絶対にあってはならない。金銀に目を眩ませている者達にエルーシアちゃんを預けるわけにはいかん」」

二人は納得してくれました。


(教会って評判が悪いのね。

一族から聖女が出たら、家の格が上がるって聞いていたけど・・・。 

あ!我が家は公爵だから、もう最高の格なのかな?)

と思っていると、わたしの人見知りが発動。

そそくさとお父様の陰に隠れていまいました。


「あははは、エルーシアちゃん。今更人見知りが始まったのか?」

とお父様が言ってわたしをもう一度二人の前に移動させました。

二人の前でもじもじしている、わたしを見てお祖父様とお祖母様は、垂れ目なってデレデレと撫で撫でしてくれました。


ぽよーん! ぷるぷる!


そしてお祖父様、お祖母様は目を見開きました。


今ここでやっとプルプルがいることに気づいたのです。



※エルーシアは、プルプルを一匹じゃなくて、一人として数えています。

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