第四話 たいへんだ。たいへんだ!王都にいくよ!?

第4話



わたしは、乳児から幼児になり5歳になりました。


お父様は、領地内で獲れた麦などの収穫量の確認が終わり、国へ納める準備をしているようです。


さてわたしは、幼女のためか、いまだにお屋敷の外に出たことがありません。

小さなコミュニティだけの生活なのか、超 人見知りで、お父さんとお母さん、クラーラとメリア以外は、恥ずかしくて目を合わせることが出来ません。

そしてわたしは、一度親に捨てられているので、捨てられないようにお母様の後を付いて歩いています。


「エルーシアちゃんは、本当に甘えん坊ね」


お母さんはそう言ってわたしを抱っこして、頭を撫で撫でしてくれます。


お父さんは、外出するときも帰宅したときなど、わたしの顔見るとチュウをします。

わたしを溺愛しているのですが、過去の記憶がそれを素直に受け入れません。

だって、わたしを守ってくれるはずの父親が、魔力が低いからといって捨てたのですよ。

もうトラウマです。


(お母さんのお腹の中にいる頃から記憶があるから・・・

なければこんなに悩まなくても良いのに・・・)

と考えるのは、つかの間で、お母さんの後を付いて歩いたり、メリアと遊んでしまいます。


生まれたときは王都にいたのですが、今はベルティンブルグ領の領都のベルティンに住んでいます。

ベルティンブルグはどんなところかというと、北はアールーペーン山脈があり、西にはリーニア河があり、リーニア河はこの大陸でも上から数えた方が早い大きな河のようです。

北部は標高が高いので気温が低く、南部は温暖な気候と聞いています。

そしてわたし達の住むベルティンは、ベルティンブルグ領内の東にあり、王都に近い所にあります。


クラーラも、御者をしているワグナー(夫)とメリアと一緒に、ベルティンにある館に移住して働いてくれています。

本当は、王都フーツにある館で、お祖父様のお世話をするはずだったのだけれど、わたしが、クラーラとメリアに抱きついて離れなかったため、クラーラの家族がこちらに住むことになったの。

わたしって甘やかされていると思う。ふふふ。


そうして今日もメリアとお庭で遊んでいると


「エルーシアちゃん!お父さんのお母様、ばぁば(お婆ちゃん)が病気になった。

私と、一緒に王都まで行くよ」

使用人も使わず、お父様自身が走ってきました。


「はい。おとうちゃま。おかあちゃまも、いっしょにいくの?」


「エルーシアちゃん。今回は急ぎなので、私とエルーシアちゃんとクラーラの家族と行きますよ」


「え? おかあちゃまは、いっしょにいかないの?」


「お母さんは、近々夜会があるから、その準備で今回はいけないのだよ」


「エル(―シア)さみしいな。おかあちゃまいないと」


そうすると邸から出てきたお母さん(アルーシャ)は、わたしを抱きしめて


「エルちゃん。お母さんも寂しいけど、今回は我慢してね。

クラーラもメリアも一緒に行くからね。エルーシアちゃんは、良い子だから大丈夫よね?」

と諭してきました。


(ここは、一回ごねた方が、可愛いかしら? それとも、良い子の振りをして納得した方が可愛いかしら?)

と考えているとお父様が


「エルーシアちゃん。今回はお父さんもエルーシアちゃんと、ずっと一緒にいるから寂しくないよ」


わたしの頭を撫で撫でしてくれました。


わたしは、お父さんの顔をみて

「わたち、いいこだから、おかあちゃまいないのがまんする」

わたしは、よい子を演じることにしました。


そうこうしているうちに、御者のワグナー(クラーラの夫)が馬車の準備を終え、クラーラが荷物をまとめて出てきました。


「お館様、エルーシア様、出発の準備が出来ました。馬車にお乗り下さい。

今回は、私たち家族も一緒に移動しますのでよろしくお願いします」


と言って、わたし達は馬車に乗り、見送るお母さんを後にして馬車がゆっくりと動き出しました。


(わたし、お母さんと別になるの初めてだ)と考えていたら

手を振るお母さんを見て涙を流していました。


「おかあちゃま~」

わたしは、馬車の後ろの窓から手を思いっきり振りました。


「エルちゃん~」

お母さんも泣いているわたしに向かって手を振ってくれました。


おとうさんや、クラーラそしてメリアにも慰められ馬車は王都フーマにむかうのでした。

******************


やっと、ドラマが動き出しました。

エルーシアは、両親に捨てられないように、母のアルーシャと父のリカードにべったりと甘えています。

世界征服じゃなくって、大陸を守る準備の前に先ずは自身の身の上をかためたいのでしょう。

そして、親の二人は甘えてくるエルーシアが可愛くてたまりません。

エルーシアの幼さを表現するために お父様を『おとうちゃま』 お母様を『おかあちゃま』と呼んでいます。

高校生だったエルーシアが生まれ変わる前の記憶を持ったままだと、自分を幼く見せるのに色々と苦労をしているようです。

そして、成長した姿はエルーシアがベルティンに戻ってくるまで楽しみにしていてください。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る