第二話 周りの水 なくなっちゃいました

第二話



《女の子げんきになーれ》

ビカビカ

《お母さんげんきになーれ》

ビカビカ

《明るくなーれ》

キラキラキラ

今日も今日とて魔法を使いまくる毎日。

わたし達の体も大きくなってきました。


そんなある日のこと。

わたしの周りの環境が劇的に変わったのです。


「!!!!!! ?」


(どうしたの、わたし達の周りにあった幸せの水が無くなってしまったわ。

これって破水?)


そう思っていたら、

まわりが少し明るくなってきました。

何気なく近くの子を見ると、首にへその緒が巻き付いているではないですか!


へその緒は、命綱の役割から殺人凶器に変更しているのです。


(うげ!  ま、まずいわ。

このままだと、死んじゃうわ)



女の子は、ズンズンと大人達に引っ張られている為か、外に引っ張られています。

体がどんどんどす黒くなってきています。


(マジ首つり。危険これは、絶対まずい・・・)

どうしよう。どうしようと慌てふためきましたが、とっさに念じていました。


《へその緒切れて》


風の魔法と思うのですが、女の子とお母さんの体を傷つけることなく、スパッとへその緒を切ったのです。



首に巻いていたへその緒が、切れた事で、引っかかっていた物がなくなり、スムーズに移動できるようになったようでしょう、すぐに女の子は外に出ていきました。 



「・・・ ・・・ 」


(え? え? 

泣き声が聞こえない。

え! へその緒を切ってしまったから?・・・

きっと、泣いていないのは、呼吸が出来ていないのね)


《首がよくなれ! 呼吸して! 体調戻れ!でべそじゃなくなれ~!》


ビカビカ☆ ピカピカピカ☆


そして、わたしの魔法で、まるで、太陽の陽のような光が、わたしから出て、きっと女の子の周りで輝いていることでしょう。


やれやれと思って、耳を澄ませました。

しかしまだ、泣き声が聞こえないのです。

わたしのお願い(魔法)失敗したの?


よし、もう一度お願いをしてみようと、思った瞬間。


「ふん ぎゃ~」(女の子の泣き声)


(ふぅ。なんとか、声が聞こえたわ。

これで安心かしら?)


わたしは、念のために、もう一度、女の子とお母さんに回復魔法と治癒魔法をかけておきました。


あれれ。なんだか体がひっぱられ~る~。

そして、わたしも外に出ました。

(おお。マジで明るいな。目が潰れてしまいそう)

なんて、考えながら、キョロキョロしていると、産婆さんでしょうか、お婆ちゃんと目が合いました。

(やば、目が見えることがばれちゃう。でも挨拶はしておこう)

「お ん ぎ ゃ ― (皆様はじめまして)」

あははは

やっぱり声はまだだめなようです。


「二人目も女の子ですね。お姉ちゃんは、病弱っぽいですが、二人目のお嬢ちゃんは、光りませんでしたね」


いやいや、ハゲのおっさんみたいに言わないでよ。

先に産まれた子を光らせたのはわたしですけどね。

そんな事を考えていると、へその緒をお婆ちゃんが切ってくれました。



ガチャッ

と音を立てて、部屋に男性が入って来ました。

その男の人は、ブロンドの髪に、ほぼ左右対称の美顔です。

痩せ型で、寝不足なのか目の下にくまができて、頬がこけているように見えます。


「おい。少し前にこの部屋からものすごい光が放たれていたのだが、

どっちの子だ?」


(あれ?この男の人、もう二人子供が産まれたってわかっているの?

でも出産が終わったばかりの母体に話しかけるのって常識知らずね。

イケメンだけど)


「あらあら“坊ちゃん伯爵様”。

奥様は、お二人を出産したことで、会話はまだ出来ませんよ。

坊ちゃん、ここは、どちらの子だと問う前に奥様に労いの言葉をかけるのが先と思いますが、坊ちゃんはそんな事も出来ないのかい。

どういった神経をしているのかしら?

私はこんな気遣いの出来ない男性をとり上げた覚えはありませんよ」


男の人を窘めたのは、どうやらこの男の人が産まれたときの産婆さんのようです。


「そうだな。

落ち着いたらまた、戻ってくる。

それにしても、魔力量が多い子が産まれたようだ。

魔力測定器を持ってこよう」


そう言って、男の人は部屋から出て行きました。


「それにしてもだが、産まれる時にこんなに光り輝いて出てくる。

おほほほ。初めて見たのぅ。

首にへその緒が巻きついて出てきたときには、冷や汗がでたわ。

しかもそのへその緒が切れていて二度ビックリしたわ。

それにしても、この部屋の中だけ光ったと思うのじゃが、伯爵様には、見えたのかのぅ?」


産婆さんの言葉に、若い女性が

「伯爵様は、有名な冒険者バーティーにおられた魔法使いです。

魔力が見えて、光ったとわかったのはないでしょうか?」


「そうかのぅ。まるで魔力量をものすごく持った女の子が産まれてくるのを知っているような感じで、不自然な行動のように見えたのじゃが」


「それは、考えすぎと思いますよ。そんな未来予知をするなんて、神の神託を受ける、聖人の紋章か聖女の紋章を持った者だけですよ。

噂によると、伯爵様は、その能力があったとか無かったとか。

今は、初級魔法も使えないと聞いていますよ」


「そうじゃな。きっと考え過ぎだろうかのぅ。

そんな事よりも、少しでもはやく、奥様に二人の赤子を抱っこしてもらえるよう、とりかかろう」

「はい」



そして、しばらく経ち、お母さんが、わたし達二人を抱っこしていると、

お父さん(美丈夫な男性はお父さんと判明しました)は、魔力を測る測定魔導具を持って来ました。



(これだいぶ古いけど壊れていないかな? 大丈夫かな?)と思うほどボロボロの魔導具です。



そして、計った結果。

お姉ちゃんは120とすごく魔力量が多いみたい。

わたしは    4 

平民より低い  4と魔力量測定器にでました。


(う~ん、おかしいな?)


わたしは、お母さんのお腹にいる頃から、前世の記憶があって、お腹にいるときから、回復魔法を使っていたのに。

体の弱いお母さんにお腹の中から回復の魔法を一日二回はかけてたのよ。

魔力    4では一日に複数回も、回復魔法はつかえないわよね?



そして数日後お父さんは

戸籍上、わたしは、産まれなかったことにして、わたしを捨てる。と言い放ちました。


お母さんは、わたしの手の甲に、浮き上がる、紋章をみて、「この子は女神様に愛されているの!だから捨てては駄目」と何回も反対してくれましたが、

お父さんは魔力のない子供は貴族の娘ではないと言い張りました。

お母さんは体が弱いため、わたしが回復魔法を使ったときに、その紋章がでるので、お母さんは女神の祝福の紋章を見ていたのだけれども、お父さんは見たことなかったから信じていなかったみたい。

お父さんも手の甲に紋章がでているけれど、魔力は全く感じられないな。


わたし達が産まれて数日後

お父さんは、領主が決めたことだと、絶対的な権力を使って、わたしを捨てることを決定したのです。

お父さんって、なんて酷い人だ。こんな赤ちゃんを捨てるなんて、

まだ、歩くこともしゃべることも出来ないのに。魔法はつかえるけれど。

あ! だから歩けなくてしゃべれない今のうちに捨てるのか…


そして、お父さんは、わたしを抱っこして馬車の移動をはじめました。

十分ほど移動したところで馬車がとまりました。

そして、お父さんはわたしを捨てました。

「すまない・・・」そう言い残して・・・。


そのとき、お父さんから禍々しく、黒い魔力に覆われているように見えたのです。




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