ふるさと 🫛

上月くるを

ふるさと 🫛



冬三日月風と土とに育てられ

へその緒の土に還りて寒北斗


降り立てば空気がちがふ冬の駅

改札にコートの襟を立てにけり


寅さんの影法師ゐる冬の駅

西口の灯の照らす枯野かな


寒月に三編み少女ほほゑめる

追憶を吹き鳴らしたる虎落笛


謗られて恥じ入る一茶寒雀

ちかちかと瞬き合ふや寒昴


父の山母なる川や枯木星

代替り生家の卓の蜜柑籠


わが守る子らの故郷や冬青空

冬うらら孫の故郷は山むかふ


文学はこころの故郷石蕗の花

わが犬のふるさとはわれ冬菫


ほろほろと海を目ざせる冬の蝶

空凍てりや鳥も海へと還りけり


みな還る魂魄ソウルの故郷冬銀河

帰り花みなで歌へる「故郷」かな




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