吸血鬼イブニング。彼には人間の友人ウィリアムがいました。彼はなくなり、イブニングの手元にはウィリアムの遺稿が残され、遺言もあってその完成にはげむことになります。
ところが……。
うおお、と思ったのはどうしたらこの遺稿を完成させられるのかということ。
イブニングは物語を書くことができず、他の人々に物語の執筆を依頼するのですが……。
次第にイブニングはある結論に達することになります。それが本当に「そうだよね」としかいえないもので。
最近は生成AIなども盛んで、私自身寝る前にチャットGPTにほのぼのした小話を作ってもらって癒されながら寝たりすることもあるのですが、やはり自分ではないものが自分の物語を作るとなると奇妙な気分になります。私の話は私が紡ぎたい。そこに物語を紡ぐ人間の業があるなと感じました。
この作品も同じで、ウィリアムの物語を紡げる人などいるのでしょうか。
やはり——という大きな問いを投げかけています。
そんななかで、作中に出てくるある人が叫んだ言葉、
「作家ってのはよ、自分の小説を書きたいもんなんだよ」
これが真実だなと感じました。そうなんですよね。
そう考えるとイブニングが一番初めに選んだ女性はイブニングの執念の被害者と言えるかもしれませんが……いえ、いえ、彼女はとんでもない独自色を出していました。
やはり、作家は自分の書きたい話しか紡げないのだろうか?
さて、作家の「自分の物語を書きたい」という欲求をある意味振り回しているイブニングに魔性を感じながら、レビューの幕引きとさせていただきます。