明治文学
第115話 金色夜叉(尾崎紅葉)
書かせていただきます。
【簡単な作品紹介】
明治30年から35年まで読売新聞に連載された長編小説。連載中に作者が死亡したため、未完となっている。発表当時は大変な人気があって、映画やドラマにもなっている。
【数行で読める、あらすじ】
主人公の貫一が、許嫁の宮を金持ちに奪われてしまい、自暴自棄になって高利貸しになったところ宮が悔悟する、という話。
【作品の特徴】
三人称小説。文語体で書かれている。明治時代は言文一致がまだ不完全で、作者によっては漢文のような文章で書かれていたりと、文体のバリエーションが多い。本作もその一つ。
現代は夏目漱石の系統(初めて言文一致を試みた小説は二葉亭四迷『浮雲』だが)の文章に統一されていて、そちらに慣れきった読者が多いだろうから、文語体の専門教育を受けていない人は、読みにくい。
ただし、文語体にもメリットがあって、独特のリズムのある文章になっているから、漢詩を読んでいるような味わい深さが出ている。文語体に慣れさえすれば、美文に酔うことができるだろう。
他、女性のことを「彼」と書いてあったりもして、当時と今では言葉の使い方も違うところがあるので、混乱しやすいところもあるから注意。
【作品の見どころ】
高利貸しに関するテーマが見どころ。
大筋は主人公の貫一の失恋物語なのだが、作中で高利貸し関する是非の議論がある。天引き3割3月縛りの高利貸しというビジネスに関して掘り下げているところは、現代でも通用する問題提起で面白い。
弱みに付け込んで貸すのは人の道に反する、というテーゼと、借りるやつがいるから貸すのであってそれが不正なら社会が不正なのだ、というアンチテーゼを戦わせる展開になっていて、『闇金ウシジマ君』とか『なにわ金融道』のような金融漫画が好きな人にはたまらないと思う。
お金な関する問題は普遍性があり、どっちが正しいか簡単に決められない問題なので、作品のテーマとして議論する価値がある。
色々な言い分を登場人物に言わせることで、読者にどっちが正しいのかと考えさせたり、この人の意見が正しいのではないか?と読者に感情移入させることができるので、小説として面白い展開を生み出せている。
現代でも十分に通用する内容なので、娯楽小説の水準が現代より低かった明治時代では、尚更面白く感じたはずだ。人気小説になったのも理解できる。古い小説だからといって読まないのはもったいないくらい面白い。
未完で終わったのが残念でならない。
【豆知識】
この作品は、アメリカの作家、バーサ・M・クレー。本名シャーロット・メアリー・ブレイムが書いた小説『女より弱きもの』を種本にして書かれたと言われている。
明治時代の小説は、古典や海外文学を翻案して書かれたものが多くて、芥川龍之介『羅生門』(元ネタ・今昔物語)、太宰治『走れメロス』(元ネタ・シラーの『人質」)など、例が多くある。興味がある人は、調べてみるといいだろう。
【終わりに】
今日の解説は、こんなところかな。異論や反論や要望があれば、感想に書いてね。加筆修正しますよ。
ちなみに、記事の内容や、取り上げる作品は、私の独断と偏見が強いので、あしからず。
それじゃ、今回はこんなところで、さよなら、さよなら、さよなら。
古典小説を千字前後で紹介するガイド本 タナトス @tanatos2
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