ないしょのはなし

尾八原ジュージ

ひそひそ

 じつはね。

 うち、びんぼうだったの。

 ママもパパもあんまり帰ってこなかったしね。


 おなかへって眠れないときとか、よく妹とふたりでお絵かきしたの。

 お城みたいな家に住んで、毎日ハンバーグやエビフライ食べてって、こうだったらいいなって話してね。


 そしたらチチカタのオバって人が来て、今日からオバちゃんちで暮らそうって言われたの。

 うちが妹もつれてくって言ったら、ダメダメ、そんなもん置いていきなって、こわい顔されちゃったの。


 そのときね。妹、押入れの中からこっち見てたの。

 おっきな目してね。頭さかさまで、手ぇこっちにのばしてガリガリしてね。

 すごく怒ってた。


 でもね、オバが「妹はお寺さんがつれてってくれるよ」って言うから、お寺さんなら大丈夫かなって、バイバイしたの。


 オバはね、いい人。

 ハンバーグもエビフライも作ってくれるの。

 でもね、妹のことは、なんかヘンな気配しない? って、そんだけ。

 よく見えないみたい。


 妹はね。

 お寺さんが燃えちゃったから。

 こっそりうちのとこ来て、今はオバんちの押入れにいるの。

 ないしょ、ね。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ないしょのはなし 尾八原ジュージ @zi-yon

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ

同じコレクションの次の小説